【社説】政治資金規正法改正 裏金への抜け道、残すのか

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件の表面化から半年経過してようやく、与野党が提出した政治資金規正法改正案などが衆院の政治改革特別委員会で審議入りした。

 使途公開の義務がない政策活動費や企業・団体献金の存廃、政治資金パーティーの在り方を巡って各党の隔たりは大きいが、「政治とカネ」に決着をつけなければ政治全体への不信が増幅しかねない。

 政治資金の透明化に最も後ろ向きなのは、事件を起こした自民の改正案だ。裏金化や企業・団体献金の抜け道を温存したいのは明らかで、改革の名に値しない。

 ここに来て自民は共同提出を拒んだ公明党を取り込む作戦に出た。パーティー券購入者名の公開基準について法案の付則に3年後の見直しを明記すると持ちかけている。だが、その場しのぎの先送りに過ぎず、公明は受け入れてはならない。自民と同じ「やる気なし」の烙印(らくいん)を押されると覚悟すべきだ。

 自民案はパーティーの公開基準を現行の20万円超から10万円超に引き下げたが、公明が主張する一般の寄付と同じ5万円超を拒んだ。名前の公表を避けたい企業の購入額が減ると金集めに困るからだ。反省の色は見られず、あきれるほかない。

 禁止された政治家個人への企業・団体献金の抜け道とされ、裏金づくりの温床になった実態を踏まえれば、「政治活動の自由」を振りかざしても説得力はない。立憲民主党が主張するパーティーの全面禁止や、日本維新の会が打ち出す企業などの購入禁止に踏み込むべきではないか。

 政策活動費に至っては、自民案は透明性を高める気が全くないようだ。受け取った議員が「組織活動費」「選挙関係費」といった大まかな支出項目を党本部に報告し、政治資金収支報告書に記載するという。実際に何に使ったのか検証できず、ブラックボックスであることに変わりない。

 本紙報道によって国政選挙への投入の実態が明らかになっている。自民では幹事長ら党幹部に年間10億円前後を渡してきた。選挙の公正を阻害する使い方を絶対に許してはならない。廃止か、使途の原則公開とするのが筋だ。

 政治家が複数の政治団体を持ち、金を出し入れすることも資金の流れを不透明にしている。見直しが必要だ。

 立民もいただけない。パーティー禁止法案を提出しながら「法施行までは」と議員のパーティー開催を容認している点だ。禁煙を訴えながら、たばこを吸っているようなものである。衆院3補選全勝で得た国民の期待を裏切らぬよう対応を改めてもらいたい。

 国会は会期末まで残り1カ月を切った。参院で自民は単独過半数を占めておらず、自民案を数の力で成立させることはできない。

 「今国会で改正を必ず実現する」と繰り返す以上、岸田文雄首相は他党案を取り込む決断をすべきだ。野党も抜本改革と呼べる内容に修正されるまで妥協してはならない。会期延長も視野に与野党は合意形成を尽くす必要がある。

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