メモにウイルス「怪しいと」無遅刻無欠勤で副店長任されたベトナム人女性、詐欺被害防ぐ 芦屋のコンビニ 

大上健二署長から署長感謝状を受け取るグェン・ティ・ゴックさん(左)=芦屋署

 客に声をかけて特殊詐欺被害を未然に防いだとして、兵庫県警芦屋署は22日、芦屋市月若町のコンビニ店「ローソン芦屋川駅前店」の副店長で、ベトナム籍のグェン・ティ・ゴックさん(27)=尼崎市=に署長感謝状を贈った。6年前に来日し、同店でアルバイトとして働き始めたゴックさん。感謝状を受け取り、「詐欺を止められて自分もうれしい」とほほえんだ。(地道優樹)

 4月24日、同店に芦屋市の女性(67)が7万円分の電子マネーカードを買いに訪れた。ゴックさんは金額が大きいことや、女性が「ウイルスに感染」などと書いたメモ用紙を持っていたことを不審に思い、県警から配布された啓発グッズを女性に見せた。

 グッズには「突然表示されるパソコンの警告画面に注意!!」などと詐欺の手口が書かれており、同店では高額な電子マネーカードの購入者に見せることになっていた。「日本語はあまり読めないけど、『ウイルス』という字を見て怪しいと思った」とゴックさん。急いで店長の山本直人さん(42)を呼び、女性から事情を聞いた山本さんが110番した。

 芦屋署によると、女性はパソコンに「ウイルスに感染した」という警告画面が現れたため、表示された電話番号に連絡。マイクロソフトの社員を名乗る男から「修理費と保証費としてカードを買ってきて」などと指示されていたという。

 ゴックさんは日本に留学していた親戚から「人が優しい」と勧められ、2018年夏に来日。神戸市の日本語学校に通いながら、19年冬から同店でアルバイトを始めた。当初は日本語がほとんど聞き取れず、商品名なども読めなかったが、同僚に教わりながら仕事を覚えていった。

 日本では字が読めず買い物に困ったり、ニュースが分からなかったりと苦労も多いが、すぐに溶け込んだという。「ベトナムより給料がいいし、生活が便利で住みやすい」と話す。学生ビザの期限が迫った頃、山本さんから「社員にならないか」と声をかけられた。就労ビザが発行されれば日本に滞在できる-。二つ返事で快諾し、22年秋に入社した。

 ゴックさんはこれまで無遅刻無欠勤で、店長の山本さんは「言ったことをきちんとやってくれる人」と信頼を寄せる。真面目な仕事ぶりが評価され、先月からは副店長を任された。詐欺被害を防いだのは、その約1週間後だ。ゴックさんは「日頃から解決できないことはすぐ相談するようにしていた。今回は職場のみんなを手伝うことができた」と笑顔で振り返った。

 芦屋署管内では今年に入り、計11人のコンビニ店員が声かけで特殊詐欺被害を食い止めているが、外国人はゴックさんが初めてという。

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