カンヌ映画祭、女優賞に4人も選ばれた理由【第77回カンヌ国際映画祭】

左から『エミリア・ペレス(原題)』のアドリアーナ・パス、カーラ・ソフィア・ガスコン、ゾーイ・サルダナ、セレーナ・ゴメス - Neilson Barnard / Getty Images

現地時間25日、第77回カンヌ国際映画祭授賞式後に『バービー』のグレタ・ガーウィグ監督率いる審査員団が会見し、コンペティション部門の受賞結果について説明した。

通常一人の女優に与えられる女優賞だが、今回は『エミリア・ペレス(原題) / Emilia Perez』のカーラ・ソフィア・ガスコンゾーイ・サルダナセレーナ・ゴメスアドリアーナ・パスの総勢4人が受賞した。同作はカルテルのボス、フアン・デルモンテが悲願の性別適合手術を受け、エミリア・ペレスという名の女性として新たな人生を生きるさまを追ったミュージカルスリラー。カーラがフアン/エミリア役、ゾーイがフアン/エミリアの弁護士役、セレーナがフアンの妻役、アドリアーナがエミリアの恋人役を務めている。

ガーウィグ監督は「彼女たちは常に相互に作用し合っていて、それぞれに全く違いながらも全員が輝いていて、まるで一つのユニットみたい。もしバラバラにしてしまったら、彼女たちが共に生み出した魔法を弱めてしまいかねないと思った」と4人に女優賞を授与した理由を明かす。「“女性たちの連携”は、今回多くの映画で感じられたことでもある。それは女優賞を決めるに当たって、わたしたちが本当にたたえたかったこと。『エミリア・ペレス(原題)』の4人はそれぞれが秀でていたが、一緒になると超越していた」

批評家から絶大な支持を得たモハマド・ラスロフ監督の『ザ・シード・オブ・ザ・セイクリッド・フィグ(英題)/ The Seed of the Sacred Fig』を「特別賞」という別枠にした理由は、「素晴らしい映画であり、その全てを特別な方法でたたえたかった」からだという。「全ての俳優たち、監督の仕事といった映画そのものから、この映画が象徴するものまで。本作を作るために彼らが支払った代償、勇気、映画のための犠牲をたたえたかった」。反体制的だとマークされていたラスロフ監督は同作の撮影中に禁錮8年&むち打ちの刑が確定してイランを脱出。活動家で女優のソヘイラ・ゴレスターニらは出国が許されず、カンヌ映画祭に参加することがかなわなかった。

審査員団が最高賞パルムドールに選んだのは、セックスワーカーを主人公にしたショーン・ベイカー監督のコメディードラマ『アノーラ(原題) / Anora』だ。ガーウィグ監督は「新しさを感じさせるのと当時に、(エルンスト・)ルビッチやハワード・ホークスといったクラシックの形式も使われている。そして全ての演技、キャラクターたちの顔が大好きだった。心が惹かれて選んだ感じだ」と説明した。

その他の審査員は、『万引き家族』で最高賞パルムドールを受賞した是枝裕和監督、元ボンドガールとしても知られる女優のエヴァ・グリーン(フランス)、『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』の女優リリー・グラッドストーン(アメリカ)、『存在のない子供たち』の監督・脚本家ナディーン・ラバキー(レバノン)、『雪の轍』の脚本家で写真家のエブル・ジェイラン(トルコ)、『最強のふたり』やドラマ「Lupin/ルパン」の俳優オマール・シー(フランス)、『雪山の絆』の監督、プロデューサー、脚本家J・A・バヨナ(スペイン)、『シチリアーノ 裏切りの美学』の俳優ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ(イタリア)だった。(編集部・市川遥)

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