シュールなアートにしびれる! 巨匠デ・キリコの作品100点以上が集まる展覧会

「デ・キリコ展」開催中!

【女子的アートナビ】vol. 335

本展では、イタリアやドイツなど世界各地から集められたデ・キリコの絵画を中心に、彫刻、挿絵、さらに舞台衣装のデザイン画など多彩な作品100点以上を展示。初期から晩年までの作品をとおして、デ・キリコ芸術の全体像に触れられる展覧会です。

デ・キリコって?

デ・キリコはギリシャ生まれ。両親はイタリア人で、父親はシチリア貴族の家系でした。

アテネの美術学校やドイツのミュンヘン・アカデミー絵画コースで学んだデ・キリコは、幻想的な作品を描いたベックリンやクリンガーなどの画家たちに影響を受けます。

その後、1910年ごろから「形而上絵画」の制作を開始。

形而上絵画とは、幻想的な風景や静物によって非日常的な世界を表現する絵画のことで、ゆがんだ遠近法を用いたり、脈絡のないモチーフを並べたりしてシュールな雰囲気を出しています。

彼が生み出した「形而上絵画」は、ダリやマグリットなど多くの前衛画家たちに影響を与えましたが、デ・キリコ本人はいったん形而上絵画から離れ、1919年以降、ティツィアーノのような古典的絵画を描きはじめます。

その後、再び「形而上絵画」の画風に戻り、過去に描いた作品を再制作したり引用したりして、新たな作品を生み出していきます。

同じモチーフを繰り返し描くデ・キリコの制作方法は、アメリカで活躍していたアンディ・ウォーホルが高く評価。デ・キリコをポップアートの先駆けと見なしていました。

第一次世界大戦と第二次世界大戦を生きのびたデ・キリコは、トリノやフィレンツェ、パリなどヨーロッパ各地に移り住みながら暮らし、晩年はローマのスペイン広場近くにある住居を終の棲家として90歳で亡くなりました。

デ・キリコの絵は難しい?

デ・キリコの作品は、文字で解説すると「形而上」などのなじみにくい単語が出てくるので難しく感じてしまうのですが、実物を見ると意外に親しみやすくおもしろいです。

例えば、彼の室内画《球体とビスケットのある形而上的室内》では、三角定規のような物体や球体、ビスケットなど何のつながりもなさそうな物体が並び、不思議な雰囲気が漂っています。

彫刻の展示室もおもしろいです。デ・キリコの絵画をそのまま立体化したような彫刻は、ブロンズなのに柔らかな雰囲気。彼が繰り返し描いた「考古学者」や「馬と騎士」などのモチーフが、そのまま彫刻になっています。

また、舞台関係のデザインも、デ・キリコの個性があふれています。彼は1930年代から1960年代にかけて、ヨーロッパの有名な劇場でオペラやバレエなどの舞台美術や衣装を制作しました。

デ・キリコはニーチェやショーペンハウアーなどのドイツ哲学にも影響を受けて作品を制作しているので、作品解説を読むと、少し難しく感じることもあります。

なので、とにかく美術館で実物を見るのが一番です。本来、あるべきでない場所にビスケットが描いてあったり、ありえない組み合わせのモチーフが並んでいたりするので、見ていると奇妙な感覚に陥ります。その違和感をぜひ楽しんでください。

グッズもシュール!

最後の特設ミュージアムショップでは、デ・キリコの作品がグラスやステーショナリー、トートバッグなどさまざまなグッズになっています。

特にかっこいいのは、Tシャツ。絵画の中に描かれている三角定規のモチーフがデザインされ、クールでシュールです。色も、作品に出てくるカラーが使われているので、デ・キリコの世界観をそのまま身につけることができます。

神秘的で謎めいていて、夢の世界のようなデ・キリコ作品が楽しめる本展は8月29日まで開催。

Information

会期:2024年4月27日(土)~8月29日(木)
場所:東京都美術館 企画展示室
開室時間:9:30~17:30、金曜日は9:30~20:00(入室は閉室の30分前まで)
休室日:月曜日、7月9日(火)〜16日(火)
※ただし、7月8日(月)、8月12日(月・休)は開室
観覧料:一般 ¥ 2,200、大学生・専門学校生 ¥ 1,300、65歳以上 ¥ 1,500
※土曜・日曜・祝日及び8月20日(火)以降は日時指定予約制

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