【霞む最終処分】(41)第7部 原発構内の廃棄物 低線量でも処分困難 事故由来、他原発と別

放射性廃棄物を屋内で保管するため、増設している固体廃棄物貯蔵庫=2月28日

 東京電力福島第1原発で行き場を失っている放射性廃棄物は、原子炉内に残る溶融核燃料(デブリ)や汚染水の浄化過程で生じる汚泥(スラリー)のような強い放射線を出す廃棄物にとどまらない。東電は敷地内を襲った津波や原子炉建屋の水素爆発で壊れたコンクリート、配管などといったがれき類、作業員が着けた保護衣・手袋など、放射線量の比較的低い廃棄物を構内で大量に保管している。これら低線量の放射性廃棄物も、廃炉作業の進展に従って増え続けている。

 国と東電が定める廃炉工程表「中長期ロードマップ」は2028(令和10)年度までにがれき類の屋外保管を解消すると明記している。がれき類などは福島第1原発構内に9棟ある固体廃棄物貯蔵庫に集約、保管されている。9棟の保管容量は約5万5千立方メートルで、3月末時点の貯蔵量は約7割の3万8300立方メートルとなっている。この1年では200立方メートル増加したが、屋外にはまだがれきや伐採木などが残る。

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 原子力規制委員会は2021年、国内の一般的な原発で出る低レベル放射性廃棄物のうち、放射性物質濃度が最も高いクラスの最終処分に関する規制基準を決めた。基準では放射能レベルの高い順に「L1」「L2」「L3」の三段階に分類。制御棒や廃炉構造物などが該当するL1は地下70メートルよりも深い場所に埋設する―など、レベルによって異なる処分方法を示した。

 ただ、この規制基準はあくまで通常の原発を対象としている。過酷事故を起こした福島第1原発は、ルールの「枠外」に置かれたままだ。原子力規制庁は福島第1原発から出る放射性廃棄物を「原発事故由来の核種があり、他の発電所と同様の扱いはできない」とみており、一般の原発と同じ基準を適用するのは難しいとの立場を取っている。

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 福島第1原発の廃棄物は、事故によって飛散したさまざまな放射性物質に汚染されている可能性がある。このため、低線量の廃棄物であろうと通常の原発と同じ扱いをすれば、外部に想定外の影響を及ぼす可能性があるのが実情だ。

 原子核工学を専門とする京都大大学院工学研究科教授の佐々木隆之は、福島第1原発の放射性廃棄物の取り扱いを決めるためには「それぞれの廃棄物がどの程度汚染されているのかを分析、調査した上で処分方法などの技術を明確にしなければならない」と指摘している。だが、分析の手法を確立するまでには試行錯誤が予想され、専門家からは「長い年月がかかる」との見方が出ている。

 原子力規制庁東京電力福島第1原子力発電所事故対策室長を務める岩永宏平は「廃炉作業が進む中で、さらに大量の放射性廃棄物が発生していく。(処分するための)新たな基準づくりを急がなければならない」と強調した。(敬称略)

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