錦織圭の全仏初戦の相手、ディアロはどんな選手? NCAA出身の22歳、オジェ-アリアシムの父親が家族同然に育成<SMASH>

シングルス本戦のドロー抽選会が行なわれたその日、錦織圭は開幕迫る全仏オープンテニスに向け、会場で練習を重ねていた。

その翌日――、会見で「出場は決断したのか」と問われると、「さすがに決めました。まあ、90%くらいは……」と、幾分の余地を残しながらも出場を明言する。

度重なるケガのため、長く最前線から遠ざかっていた錦織が、2021年以来となるグランドスラムの舞台に帰ってくる。

ドローが組まれたのは現地時間の5月23日だったが、この時点で、錦織の対戦相手は確定していなかった。なぜなら相手は「予選突破者/ラッキールーザー」だったため。24日夜に予選全日程が終了した時点で、ようやく最終ドローが完成する。錦織の相手は、ガブリエル・ディアロ。カナダ出身の22歳である。

ディアロは、203センチの長身選手。ビッグヒッターなのは間違いないが、超ビッグサーバーと呼ぶほどではないだろうか。ランキングは現在166位で、最高位は今年2月に記録した129位。ただ、昨年アメリカの大学を卒業し、本格的にツアーを回り始めたばかりであることを思えば、数字はさほど意味を持たないだろう。

それ以上に注目すべきは、今大会予選の勝ち上がりだ。全試合、フルセット勝利。しかも2回戦では、クレー育ちのマルコ・トルンゲリッティ(アルゼンチン)相手に、3時間超えの死闘を制した。ベースラインから打ち合う安定感と粘り強さ、そして体力も十分に備えている証左だろう。
幼少期から長身だったディアロは、早くから国内でも目立つ存在だったという。だが14歳の時、カナダのテニス協会は、彼の支援を打ち切った。

その時、ディアロに救いの手を差し伸べたのは、フェリックス・オジェ-アリアシムの父親、サム・オジェ-アリアシムだった。息子より1歳年少の少年を、サムは自身が運営するケベック市のテニスアカデミーに招き、家族同然に育てたという。

ケベックに移ってから3年後、ディアロはアメリカのケンタッキー大学に入学し、NCAAで活躍。フィジカルを強化し、大学やチームメイトのために戦うファイティングスピリッツも体得し、昨年、満を持してプロキャリアのスタートを切った。

ディアロをよく知るカナダ人のジャーナリストによれば、「彼は初のグランドスラム本戦をとても喜んでいる」。さらには「圭のようなビッグネームとの対戦を、大きなチャンスと捉えているはず」だと言った。

錦織が、「自分にとっての証明になる」と捉える重要な復帰戦は、若き対戦相手にとってもまた、キャリアの始まりにおける大きなターニングポイントとなる。

現地取材・文●内田暁

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