【アニソン四半世紀】「アイドル」と硬派なロックバンド「ARB」が意外に合う

輪るピンク ドラム キャラクターソングアルバム「HHH」

トリプルH「輪るピングドラム キャラクターソングアルバム『HHH』」

2011年放送のアニメ「輪るピングドラム」エンディングテーマをまとめたアルバムが、この「HHH」。歌っているトリプルHはアニメ作中に登場するアイドルユニット“ダブルH”の2人、伊空ヒバリ(CV・渡部優衣)と歌田光莉(CV・三宅麻理恵)に、主要キャラクターのひとりである高倉陽毬(CV・荒川美穂)を加えたトリオだ。

放送当時から話題になっていたのが、その全曲が石橋凌を中心としたロックバンド「ARB」の楽曲をカバーしたものだということ。ARBはご存じの方も多いと思うが、その音楽性は極めて硬派で、社会的なテーマの曲も多い。そんな楽曲群を、アレンジの方向性も含めてアイドルユニットのポップスに見事に仕立てている。ARBとアイドル、ちょっと考えると水と油のような気もするが、それが意外なほど親和性が高いのだ。

中でも個人的に最もグッときたのは、アニメ14話と17話で使用された「BAD NEWS(黒い予感)」。原曲は1980年にリリースされたARBのセカンドアルバム「BAD NEWS」に収録されていた。この曲のサビでは「一瞬に何もかも吹き飛ばす」や「あちこちでクーデターが起こり出す」「この町も戒厳令しかれ出す」など不穏なフレーズが繰り返される。これがアニメでは石橋凌のボーカルとは180度異なる3人の女の子たちの声で歌われたわけだが、不思議と緊張感や説得力があった。

原曲の発表が1980年、アニメで流れたのが2011年、そしてさらに時が流れた現在でも、いや、現在でこそさらに有効性が増しているメッセージ。ARBの曲はどの時代に、誰が歌ってもその強度は不変なのかもしれない。

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