猫の『間違った歯磨き』3つの過ち かえって健康を損なうNGケアとは?正しい磨き方も

1.いきなり歯磨きしてしまう

人間からすると、歯ブラシと歯磨き粉さえあれば、歯磨きは簡単と思うかもしれません。ところが、多くの猫は、口のまわりを触られること自体が苦手です。

そんな状況で口を抑えられ、慣れない歯ブラシを口内に差し込まれてしまうと、パニックに陥ってしまいます。愛猫にとってはストレスそのものです。のちの健康にも影響しかねません。

歯ブラシを使った歯磨きを試みる前に、次の3つの手順を踏んでみてください。

  • コミュニケーションの流れで口まわりを触り、慣れてもらう
  • 問題なければ、手前から奥へと歯を軽くタッチしてみる
  • うまくいったら、ガーゼで歯の表面をやさしくなぞってみる

このプロセスを経たうえで、本格的な歯磨きに移りましょう。

2.飼い主さんの歯磨き粉を使う

いざ歯磨きする段階になっても、使うツールを間違えば、取り返しのつかない事態につながることもあります。その代表例が、飼い主さんが普段使いする人間用の歯磨き粉を使用することです。

特に気をつけたいのは、キシリトール入りの歯磨き粉です。猫がキシリトールを摂取すると、体内でインスリンが大量に増えてしまい、急激に血糖値が低下します(低血糖)。

嘔吐をはじめ、痙攣(けいれん)、肝機能障害を引き起こし、ひどい症状を放置すると、やがて命を失いかねません。

くれぐれも猫用の歯磨き粉と歯ブラシを選んで、歯磨きにトライしてください。

3.ゴシゴシ磨いてしまう

口まわりを触ることに慣れたとはいえ、最初の歯磨きはなかなか難しいでしょう。愛猫の様子をうかがいつつ、以下の手順に従って進めていくと、スムーズにいくかもしれません。

  • 水に濡らした歯ブラシを鉛筆のように握る
  • 歯周ポケットに歯ブラシの先が当たるように45度に構える
  • 磨きやすい犬歯、上の歯から始め、歯ブラシを細かく左右に動かす
  • 奥歯(臼歯)は歯石ができやすいため、重点的に磨く

注意したいのは、人間の感覚でゴシゴシ磨いてしまうことです。無造作にやってしまうと、愛猫の歯茎を傷つけ、結果的に大の歯磨き嫌いになってしまう恐れもあります。

磨き方は基本的に人間と同じで、歯周ポケットから歯垢をかき出すイメージ。やさしいタッチで歯ブラシを小刻みに動かすのがコツです。

理想は1日1回、できれば3日に1度は歯磨きしたいところです。歯ブラシを使った歯磨きを嫌がる子には、歯磨きシートやデンタルケアおやつ、歯磨きジェルなどのグッズを活用しましょう。

そもそも猫は歯周病になりやすい

猫の歯は乳歯で26本、永久歯で30本あり、形状と役割はそれぞれ以下の3つに分かれています。

  • 犬歯:獲物の脊髄を寸断させる
  • 門歯:獲物の毛や羽をむしり取る、グルーミング時のブラシ代わり
  • 臼歯(前後):主に獲物の肉を噛みちぎる

猫は人間と違い、虫歯になりにくいと言われています。臼歯で獲物の肉を食いちぎり丸飲みするので、口の中に食べ物のカスが残りにくく、虫歯の原因となる菌が生息しづらい口内環境だからです。

現在では、多くの猫はキャットフード(ドライ、ウエット)を食べて暮らしています。生肉食とは異なり、口の中に食べ物のカスが残りやすい食事のため、歯の健康維持には歯磨きが不可欠です。

食べ物のカスが歯と歯茎の間、いわゆる歯周ポケットに溜まると歯垢になり、放っておくと約1週間で歯石へと変わります。進行スピードは人間の約5倍です。

歯石は凸凹しているので、さらに歯垢が付着しやすくなっています。いったん歯石化すると、歯磨きしても取り除くのは困難です。そのうち歯肉炎から歯周炎へと悪化していきます。

歯周病は腎臓病や様々な病気のリスクを高める、と考えられています。なぜかと言うと、口腔内細菌が回りまわって全身へと広がって腎臓などにまで達し、炎症を起こすからです。

歯周病は、腎臓病をはじめ、さまざまな慢性疾患の原因になります。歯磨きでしっかり対策しておきましょう。

まとめ

良好な口内環境は、猫の健康寿命とも深く関わっています。重い病気につながる歯周病対策として最も効果的なのが歯磨きです。

口まわりの接触を嫌がる子は多いので、あくまで無理のないように、少しずつ試しながら実践してみてください。

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