人口減少と幸福度

 人口減少が地域にもたらす深刻さを凝縮した内容に改めて考えさせられた。20日付本紙「声」欄に載った「役員の高齢化 先細る自治会」▲佐世保市中心部で「街の空洞化が進む」と始まる文は、都会に出たっきり戻ってこない若者、町内会役員のなり手不足、地域行事の中止、学校統廃合…といった切実な現実をつづっている。町の集会所にはかつて「おくんち」に出演していたころの楽しそうな人々の写真が飾られているという▲この投稿を読んで、先日、長崎市の実家近くの停留所から数十年ぶりにバスに乗った時のことを思い出した。高校通学で毎日利用していたころは日中でも5~10分間隔でバスが来ていたように記憶しているが、時刻表を見ると十数分に1本程度に。やはり乗客減が原因だろうか▲ベンチに腰掛け、つかの間周囲を眺めていると景色も随分と変わっていた。向かいにひしめくように立っていたアパートはすっきりと建て替えられ、奥に隠れていた裏山が姿を現していた▲一方で半世紀以上前に開園した幼稚園は今もあるし、古くからの神社も深緑の中にたたずんでいる▲人が減ってもまちは輪郭を残しながら変わり続ける。だが人流が弱まれば活気は失われ、寂しさが募る。それでも幸福度を高める策はないものか。知恵の絞り所だ。(堂)

© 株式会社長崎新聞社