月収18万円〈50代・大卒非正規〉がポツリ「生まれる時代を間違えたのか…」見捨てられた〈団塊ジュニア〉を待つ残酷未来

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の2つある人口ボリュームのひとつ「団塊ジュニア」。現在、50代前半にあたる彼らのなかには、不運が重なり、一度も浮上することなく生きてきた人たちがいます。彼らを待つ未来とは?

日本の人口のボリュームゾーン「団塊の世代」と「団塊ジュニア」

きっと学生のころに何度か見たことがあるだろう「人口ピラミッド」。記憶のなかにある日本の人口ピラミッドはどのようなものだったでしょうか? ピラミッドのような形をしたもの。釣鐘のような形をしたもの。底が狭くなりつぼのような形をしたもの……さまざまですが、昨今の日本の人口ピラミッドは、【図表】のような形。いわゆる、つぼ型といわれ、少子高齢化が進んだ形になります。

【図表】日本の人口ピラミッド 出所:厚生労働省『人口動態』より作成

さらによく見ると、人口ボリュームがふたつあることに気づくでしょう。ひとつが70代の中盤あたり。もうひとつが50代あたり。前者はいわゆる「団塊の世代」。戦後、第一次ベビーブームが起きた時期に生まれた世代で、1947年から1949年に生まれた人たちを指します。今年度75歳から77歳になる人たちです。

もうひとつのボリュームゾーンが、「団塊の世代」の子世代。そのため「団塊ジュニア」。1971年から1974年、第二次ベビーブームに生まれた世代で、今年度50歳から53歳になる人たちを指します。

人口ボリュームが大きいだけに、これらの世代の動向が、日本の社会に大きく影響を与えることも。たとえば昨今騒がせてきたのが、「2025年問題」。これは「団塊の世代」の全員が、来年の4月1日までに後期高齢者になることからいわれるようになったこと。

何が問題かといえば、財政のひっ迫。まず「医療費」。40兆円強の日本の医療費の4割は75歳以上といわれています。医療費は75歳を境に大きく増えるとされ、一人当たりの年間医療費は75歳未満で平均22万円ほどなのが、75歳以上となると、その4倍以上になります。

さらに「介護費」も大きく膨れ上がります。要介護認定者を年齢別にみていくと、「65~69歳」で2.9%、「70~74歳」で5.8%だったのが、「75~79歳」で11.8%と、10人に1人の水準に。さらに「80~84歳」では26.0%と、倍々で増えていきます。

そして高齢者が増えれば、当然、年金の総支給額も大きくなり、公的年金受給者の年金総額は、令和4年度末現在で55兆7,211億円となっています。

このように社会保障費が急拡大していくなか、現役世代の負担は大きくなり、サラリーマンの給与のうち、保険料が占める割合は3割を超え、今後、さらに増えることは確実といわれています。

就職氷河期、その走りは「団塊ジュニア」…救済されず、すでに50代

現役世代の負担増。リアルに直面しているのは「団塊ジュニア」とされる人たちといえるでしょう。親が後期高齢者となり、介護問題に直面。仕事との両立を図るも、なかには介護離職に追いやられるケースも。自宅での介護に限界となると、老人ホームへの入居となりますが、その費用は親の貯蓄や年金だけで賄えないケースも。そうなると、子世代が負担しなければなりません。自身の老後に向けてお金を貯めなければならないタイミングであるにも関わらず。

そもそも、団塊ジュニア世代は、過去の社会問題の先頭に立つことが多くありました。まず、80年代に厳しさを増した「受験戦争」。そこで大学入試に望んでいたのが「団塊ジュニア」。過酷な競争により、その後の人生に明確に優越がついた、最初の世代ともいえるでしょう。

そして学校を卒業して社会に出るころにはバブル崩壊をうけて経済不況。いわゆる就職氷河期に初めに直面したのが「団塊ジュニア」でした。ちょっと前までは経過気が良く、「自分たちも、このようなキラキラした社会に……」と胸を躍らせていたのに、結局、自分たちの番は来なかったわけです。

――大学を卒業するのに、就職先がない

そんな人たちを気にかける余裕があれば、その後の日本は別の道を歩めていたかもしれません。

――就職活動にあぶれてしまった

――就職したものの、その後のさらなる不況でリストラや自己退職に追い込まれた

――希望しない就職で、その後、挫折してしまった

理由はさまざまですが、フリーターや派遣社員が増えたのも、「団塊ジュニア」からでした。「新しい働き方」などと持ち上げる風潮もありましたが、正社員のように安定しない立場。正社員には遠く及ばない給与水準……経済的に不安定なため実家を出ていくことができず、結婚も考えられず。

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、50代前半の大卒非正規社員の月収は、中央値が30.6万円。上位10%が59.0万円、下位10%が18.3万円。昨今は、それまでのキャリアを活かして特定の会社に属することのない高給の非正規社員が増えていますが、その傾向が顕著なのが、実は50代前半。全世代で、給与格差が大きい世代でもあります。

そのため、非正規社員で困窮する団塊ジュニアを自業自得と糾弾する声も一部にあります。ただ、浮上を試みたときにはすでに30代、40代。「その年齢で正社員の経験がない人は……」とチャンスがなかなかチャンスを掴むことができなかったケースも。

本来であれば、第2次ベビーブームにあたる団塊の世代。彼らが親世代になる頃に第3次ベビーブームは当然起きるものですが、それがないのは、困難に直面する団塊ジュニアを救済できなかったからといわれています。もし団塊ジュニアを救済していれば、今ほど少子化は深刻化しておらず、現役世代の負担もいまほどではない……そんな“今”があったかもしれません。

50代で月収18万円程度で生きる、非正規の団塊ジュニア。このなかにはずっと厚生年金に加入していない、という人も。国民年金保険料をきちんと払っていても、65歳から手にできる年金は月6.8万円(令和6年度)。これで暮らしていけるわけもなく、60後半でも、さらには70代になっても、アルバイトで食つなぐ暮らしは続いていきます。

――人生、一度もいいことはなかった

――生まれてくる時代を間違えた

見捨てられ、救済されることのなかった団塊ジュニア。これから先、悲痛な声を聞く機会はさらに増えそうです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

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