全貌が見えてきた『アンチヒーロー』に期待しかない!岩田剛典は本当に殺人犯なのか、徹底考察してみた

主人公の弁護士が殺人者を無罪にしてあげる――そんなストーリーを、スポンサー企業の顔色を伺わなくてはいけないGP(ゴールデン・プライム)帯ドラマで、倫理的に放送できるのか? 半信半疑だったが、このドラマはソレをやってのけてしまう可能性が濃厚になってきた。

5月19日(日)に第6話まで放送されている長谷川博己主演の日曜劇場『アンチヒーロー』(TBS系)のことだ。

正義か悪か判然としないアンチな弁護士・明墨正樹(長谷川)が主人公。公式サイトなどには《殺人犯へ、あなたを無罪にして差し上げます。》《正しいことが正義か ―間違ったことが悪か―》といったキャッチコピーが躍っている。

■実は最初の岩田剛典の事件のみ例外だった

最大の問題となっているのは、第1・2話で描かれた町工場の社長が殺害された事件。

明墨は容疑者・緋山啓太(三代目J SOUL BROTHERS岩田剛典)の弁護人となり、見事に無罪を勝ち取った。しかし、第2話のラストで、緋山が本当は社長を殺していたのではと思われるシーンが挿入され、物議を醸していたのだ。

第6話終了時点でも緋山が殺人者なのか否かは明示されていないが、後述する仮説では、彼が殺人を犯している可能性が濃厚に思えてくる。

ここでいったん、第3・4・5話で描かれた2つの事件について話しておこう。

第1・2話の緋山の事件だけ見ると、明墨は罪を犯した人間の弁護でも強引に無罪を勝ち取るスタイルのように思えた。

だが、第3・4・5話では犯罪の事実を揉み消すようなことはしていない。第3話で担当した政治家の息子の暴力事件も、第4・5話で担当した連続不同意性交事件も、最終的に容疑者が犯した罪はきちんと償わせるような結末になっていた。

第6話で弁護を担当している事件は、今夜放送の第7話で決着がつくようなのでまだわからないが、現時点では犯罪者を無実にしたかのように描かれているのは第1・2話の事件だけ。

劇中で最初の事件だったため、明墨は犯罪者の無罪も勝ち取る悪徳弁護士なのかという先入観が働いていたが、緋山の事件のみ例外だった可能性が高い。

■“江越” なる未登場キャラが黒幕の可能性

なぜ明墨は緋山に対して特例的な対応をしたのか?

それは明墨の真の目的である12年前に起きた冤罪事件に関連しているようだ。

明墨はかつて弁護士ではなく検事。12年前に検事として担当していた一家殺人事件で、志水裕策(緒方直人)という男が有罪判決を受け、現在は死刑囚として服役中。けれど明墨は、それが無実の志水に罪を着せるために仕組まれたことだったと知る。

明墨の真の目的は、志水の冤罪を晴らすことと、その企みに加担した検察官、警察官、裁判官などの悪事を暴いて糾弾すること。実際、緋山は12年前の事件に深く関係しているようなのである。

緋山は第5・6話で再登場。明墨と緋山は12年前の事件について協力関係にあり、“江越” という人物に関するなんらかの証拠を掴もうとしている模様。

ちなみに江越は未登場のキャラだが、緋山が「相手の弱みを握って支配する。江越とは、そういうヤツです」と語っていたので、冤罪事件の根幹にかかわる悪事を働いていたのではないか。

■死刑囚の息子で…コレが最有力の仮説か!?

さて、ここまでの状況を整理すると、次のような仮説が立てられる。

実は、緋山は死刑囚・志水の息子で、父を陥れた者たちに復讐しようと考えていた。そして、一家殺害を指示した黒幕は江越で、殺害の実行犯は町工場の社長。結託してその罪を志水になすりつける。緋山が恨んでいるのは江越と社長で、復讐心から緋山は社長を殺してしまう。

緋山の復讐はまだ半分しか終わっておらず、道半ばのため、志水の冤罪を晴らしてすべての闇を暴こうとしている明墨と利害関係が一致。

そこで明墨は社長殺害で逮捕された緋山と面会し、無罪にする代わりに12年前の真実を明らかにするために協力してほしいと提案。緋山が承諾して現在に至る。

以上が仮説となる。

本作のプロデューサー・飯田和孝氏が緋山再登場の第5話放送前に、X(旧Twitter)に次のような投稿をしていた。

《岩田剛典さん演じる緋山には、ストーリーでの重要な役割はもちろん、世の中への警告だったり、社会へのメッセージだったり、届かない思いだったり、込めてます。緋山の人生に寄り添って、視聴いただけたら嬉しいです。》

この意味深長なメッセージは、仮説を裏づけるひとつの論拠になりそうだ。

もしこの仮説どおり、もしくは近い真相だった場合、一連の闇を暴いて志水の冤罪を晴らした後に、緋山は自首して、社長殺害の罪を償うのではないか。主人公の弁護士が本当の殺人犯をいったん無罪にして、協力して闇を暴いた後に殺人犯はきちんと罪を償う――という着地点というわけだ。

犯罪者が野放しになったままという結末では倫理的にNGだろうが、こういう筋書きなのであれば、日本のGP帯ドラマでも描けるだろう。

今夜放送の第7話で、12年前の “驚愕の真実” が明らかになることが予告されている。後半戦、どのような怒涛の展開になっていくか、期待しかない。

堺屋大地

恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。これまで『女子SPA!』『スゴ得』『IN LIFE』などで恋愛コラムを連載。現在は『文春オンライン』『現代ビジネス』『集英社オンライン』『日刊SPA!』などに寄稿中

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