VARが勝負を分けたという発想は安易。G大阪戦で着目すべきはゲームの流れを変えられなかった指揮官の采配だ【FC東京/コラム】

2024年5月26日、FC東京が味の素スタジアムで開催されたガンバ大阪戦で0-1と敗れた。

キャプテンの松木をベンチスタートさせたFC東京はCFにディエゴ・オリヴェイラ、トップ下に荒木遼太郎を置く4-2-3-1システムを採用。同じく4-2-3-1システムで臨んだG大阪とミラーゲームとなるなか、得点機を作る一方でピンチを迎える場面もあった。

シーズン開幕当初に比べれば、縦に速い攻撃は機能している印象だ。ただ、展開は比較的単調で最終局面の崩しを個の能力に依存しているので、その個が抑え込まれると苦しい。この日の前半で言えば、荒木、俵積田晃太らが封じられたせいで、決定機は8分の1本だけだった。

どちらかと言えばG大阪がペースを握ったゲームで問われるのはピーター・クラモフスキー監督の采配だった。修正が必要ななかで、どうチームを変えるのか。指揮官が選択したのはシステムなどではなく人の変化。63分、左ウイングの俵積田、トップ下の荒木に代えて、それぞれ遠藤渓太、仲川輝人を投入したのだ。

しかし、この63分を境にむしろG大阪に攻め込まれる時間帯が増えた。人は変わっても流れは変わらず。この状況にフラストレーションを溜めたファン・サポーターもいたのではないか。

その後、攻撃的なポジションにアグレッシブな松木や技巧派のジャジャ・シルバを投入してもゴールを決めることができず、終盤の85分、逆に得点を奪われた。結局、FC東京は0-1で敗戦。リーグ戦で4戦白星なしと一時期の勢いを失いつつある。

VAR判定の結果でゴールが認められたG大阪と、そうではなかったFC東京(後半アディショナルタイム)だが、VARが勝負を分けたという発想は安易だろう。この試合で着目すべきは、クラモフスキー監督の采配にゲームの流れを変える力がなかったという事実ではないか。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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