『ミス・ターゲット』すみれと宗春の恋に終止符!? 家入レオ「ワルツ」の歌詞が心に染みる

<この愛であなたに悲しい想いばかりさせた>

『ミス・ターゲット』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第6話は、家入レオが歌う主題歌「ワルツ」が、いつも以上に心に染みた回だった。

因果応報……なのかもしれない。これまで、結婚詐欺師として偽物の愛ばかりを渡してきたすみれ(松本まりか)は、自分も偽物の愛しか手にすることができない。憧れのウェディングドレスを着て、大好きな宗春(上杉柊平)の隣に立つことはできても、永遠の愛を誓うことはできないのだ。2人の結婚式は、“模擬”(=偽物)であり、本物ではないのだから。

すみれはいつも、思っていることと反対のことを言ってしまう。結婚詐欺師として、好きでもない人に「好き」と言ってきたことの代償なのだろうか。本当に好きな人には、「好き」と伝えることができない。むしろ、「嫌いなの?」と思われるような態度を取ってしまう。

タキシード姿の宗春を見たときも、「カッコいい」と言いたかったのに、「普通です」とツンケンしてしまうし、和菓子屋の営業が継続できると聞いたときも、「用はそれだけですか?」と釣れない態度。すみれを見ていると、「もっと素直になりなよ!」と声をかけたくなるけれど、“本気の恋”ってこういうものなのかもしれない。

素直になることができないのは、拒まれるのが怖いから。すみれは、「恋は落ちるものではない。落とすものだ。追うのではなく、追わせる。恋愛はツール。稼ぐ手段だ」と言っていたが、本当は臆病だから傷つくのが怖くて、そう言い聞かせていただけではないだろうか。

本気で人を好きにならなければ、傷つくことはない。でも、宗春に出会って初めて抑えきれない恋心を知ってしまった。本気で人を好きになると、傷つくかもしれない……という不安と戦ってでも、好きだと伝えたくなってしまう。

しかし、すみれが一歩先に進めないのは、“過去”があるから。宗春とともに参加した模擬結婚式が終わったら、自首をしようと決めたのは、純白な心を持っている彼に釣り合う人間になりたいと思ったからではないだろうか。たくさんの人を傷つけてきた罪を隠しながら生きるのではなく、きちんと償って、また新たな“朝倉すみれ”として彼に会いに行きたい。そんな想いもあったのかもしれない。

また、すみれは心から好きだと思える人(=宗春)に出会ったことで、これまで好きだと言ってくれていた人たち(=ターゲット)の気持ちを理解することができたのだと思う。すみれは、闇金業者しか騙さないというポリシーを持っているけれど、彼らにだって気持ちはある。すみれが宗春を心から想っているように。彼らもまたすみれのことが好きで、すみれを幸せにしてあげたくて、お金を渡していたのだ。

「今まで、世界でいちばん美しいものは大福だと思っていましたけど、たった今それを超えました」

宗春が、ウェディングドレス姿のすみれと対面したときに言った言葉。ここでもすみれは「全然、うれしくない!」と返していたけれど、うれしい気持ちがダダ漏れだったのが印象的だった。すみれも心のなかで、「わたしも、世界でいちばん好きなものはお金だと思っていたけれど、たった今それを超えました」と思っていたはずだ。

しかし、2人の恋は始まらない。模擬挙式の最中に、宗春の父・竜太郎(沢村一樹)がやって来て、すみれは詐欺の容疑で逮捕されてしまった。連行される前に、1分だけ宗春と話す時間をもらったすみれは、「模擬挙式のあと、あなたからお金を騙し取ろうと思っていたんです」「あなたが見ていたわたしは、全部偽物です」と言い残し、パトカーに乗り込む。詐欺師として生きてきたすみれは、残念ながら演技がうまかった。

「今まででいちばん簡単に落とせたターゲットでした」

本当は、そんなことが言いたいわけじゃないのに。今まででいちばん簡単に落とせたターゲットなわけがないのに。落としたくても落とせなくて、彼を傷つけてしまうのが怖くて、自分が自分じゃなくなって、どうすればいいのか分からない。すみれにとって宗春は、“呆れるほど好きだった人”のはずなのに。

宗春の姿が見えなくなった瞬間、大粒の涙を流したすみれ。その姿に、「ワルツ」の<もしも 素直に泣ける私だったら なんてね>という歌詞が重なって、胸がギュッと締め付けられる。

出会わなければ、こんなに苦しい想いをせずにすんだ。でも、すみれが心の奥に持っていたピュアな部分を引き出してくれたのは、紛れもなく宗春だ。恋は終わったとしても、愛は続いていく。また、宗春の前で少女のように笑うすみれの姿が見られることを願っている。

(文=菜本かな)

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