月収40万円・33歳サラリーマン、〈残業なし〉〈有給消化率100%〉〈人間関係良好〉と職場自慢も「でも…耐えられない!」の衝撃

もう仕事辞めたい!と転職を志した人、実際に転職した人は多いもの。その理由は多かれ少なかれ「職場への不満」があるものですが、最近は「大した不満がないのだけど……」と転職する人が増えています。みていきましょう。

「労働条件」「仕事内容」「賃金」への不満が「転職」へと駆り立てる

厚生労働省『令和2年転職者実態調査』によると、転職理由で最多は「自己都合」で76.6%。さらにその内容を聞いていくと(3つまで複数回答)、最多は「(賃金以外)労働条件が良くなかったから」で28.2%。「満足いく仕事内容でなかったから」「賃金が低かったから」と続きます。

【「自己都合による離職の理由」上位10】

1位「(賃金以外)労働条件が良くなかったから」28.2%

2位「満足いく仕事内容でなかったから」26.0%

3位「賃金が低かったから」23.8%

4位「会社の将来に不安を感じたから」23.3%

5位「人間関係がうまくいかなかったから」23.0%

6位「他に良い仕事があったから」16.1%

7位「色々な会社で経験を積みたかったから」15.9%

8位「能力・実績が正当に評価されないから」15.3%

9位「安全や衛生等の職場環境が良くなかったから」10.2%

10位「雇用が不安定だったから」8.3%

さらに年代別に最多の理由をみていくと、20代前半では「人間関係」、20代後半では「仕事内容」、30代から「労働条件」という転職理由が増え、50代前半で再び「人間関係」がトップとなり、定年間近には「仕事内容」を重視する。サラリーマン人生、その縮図を見ているかのような結果です。

【年代別・最多「自己都合による離職理由」】

20代前半:「人間関係がうまくいかなかったから」38.4%

20代後半:「満足いく仕事内容でなかったから」31.4%

30代前半:「(賃金以外)労働条件が良くなかったから」36.7%

30代後半:「会社の将来に不安を感じたから」29.1%

40代前半:「(賃金以外)労働条件が良くなかったから」29.1%

40代後半:「(賃金以外)労働条件が良くなかったから」29.2%

50代前半:「人間関係がうまくいかなかったから」31.9%

50代後半:「満足いく仕事内容でなかったから」26.2%

働きやすいし、人も良い人ばかりだし、でもね…良好な職場環境に不満を覚える人たち

さまざまな転職理由がありますが、何かしら不満を抱いていることが分かります。しかし最近は、「特に不満らしい不満がないが、それもまた不満」という、「ちょっと何言っているのか分からない」という理由で転職する人が増えています。

それが、いわゆる「ゆるブラック」。残業や厳しいノルマなどはなく働きやすい職場。周囲からは「いい職場」と見られるも、「ここでは自己成長は見込めない」「スキルアップできない」などといった向上心から会社を辞めるといったものです。

株式会社識学による『“ゆるブラック”に関する調査」によると、「あなたの職場は“ゆるブラック”だと思いますか」の問いに、どの年代も30%後半が「“ゆるブラック”だと思う」と回答。また「“ゆるブラック”だと感じる点」について聞いていくと、最多は「収入が増えない」で67.0%。「やりがいが感じられない」44.0%、「昇級できない、しづらい」43.0%、「スキルが身につかない」35.0%、「やる気のある社員が少ない」30.3%と続きます。そして「職場が“ゆるブラック”だという理由で転職を考えることはありますか?」の問いには、60.7%が「転職を考える」と回答しています。

――残業はなく定時で帰れる

――有給消化率100%

――社員はみんな優しい

――給与もいまのところ高水準(月収40万円!)

33歳だというサラリーマンの書き込み。さんざん職場自慢をしたあとに「でも会社辞めます」「ここはゆるブラック」と宣言。あまりに居心地がいいからでしょうか、スタッフの離職率が低いのが特徴。男性が入社して8年。主任はずっと主任だし、係長はずっと係長。課長もずっと課長だし、部長もずっと部長……ほぼ昇級はなしの環境に、「このままだと自分はずっと役職なし」と危機感を覚えたといいます。

厚生労働省『令和5年賃金構造基本統計調査』によると、30代前半・大卒サラリーマンの月収の中央値は30.1万円。上位25%で35.5万円、上位10%で43.3万円。現状、男性は大卒サラリーマンの上位14.2%程度にいると考えられます。現状、確かに給与は高水準。ただこのまま給与がほぼ上がらなかったら……40代中盤に差し掛かる頃には、大卒サラリーマンのちょうど中間くらいとなり、そのまま下位グループに。

――でも残業もないし、有給もとれるし、いい人ばかりだよ

もちろん、このような環境に満足する人もいれば、もっと高みを目指したいという人もいて当然。ただ「最近はコンプラ、コンプラとうるさいから」とあまりにゆるくし過ぎると、優秀な人材の流出に繋がるといいます。どうやら、さじ加減が重要のようです。

[参考資料]

厚生労働省『令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン