担い手戦略-人・夢・技術グループの挑戦・上/ミンダナオ大から日本企業へ

◇若者に働く機会と成長の場を
人・夢・技術グループがフィリピンで展開する人材関連の取り組みが新たなステージに入った。舞台は同国で2番目に大きな島、ミンダナオ島。同国最大規模の名門私立大学であるミンダナオ大学らと人材育成に関する共同事業の覚書をこのほど交換した。希望する卒業生が来日して同社グループで活躍する道を開く。担い手確保に頭を悩ます日本と、若者の就労機会や成長の場を求めるフィリピンの両国において、それぞれの課題解決を目指す新たな挑戦が始まる。
「優秀な学生と手を組めることで明るい将来に希望が持てる」。ミンダナオ大(ダバオ市)で4月29日に開かれた覚書の調印式で、同社の永冶泰司社長は呼び掛けた。同社と長大、ミンダナオ大、同国の日本語学校であるマニラ国際アカデミー、人・夢・技術グループの出資会社で人材紹介や送り出し事業を行うフィルノス社の5者が連携する。
こうした取り組みを進める背景にあるのが、大きく異なる両国の労働力の状況だ=図参照。日本は人口減少局面に入り、少子高齢化が加速。平均年齢は約48歳に達している。
一方のフィリピンは、平均年齢が約24・5歳と若く、人口が年率約1・58%で増加している。現在の人口は約1億1900万人で、まもなく日本を抜くと予測されている。日本の高度経済成長期のような人口ボーナスが期待できる時期にあるものの、自国の産業が十分に育っておらず、就労先として海外に活路を見いだす人が多いという。
永冶社長は「日本国内の少子高齢化で、希望する質と数の人員が取れず、優秀な人材を海外に求めていく必要がある。対象はワーカーではなくエンジニアだ」と説明する。
長大の野本昌弘社長は「日本では技術者不足でインフラの整備や維持管理ができなくなる恐れがある。安全・安心な地域が守れなくなる」と危機感をにじませ、「一人でも多くの卒業生が日本語を学び技術を磨いてほしい」と期待を込める。
たくさんの人が日本で働きたいと思っている--。ミンダナオ大のグレルモ・P・トリースJr.理事長は現地の学生たちの思いを代弁し、「日本で働く機会を得て、先進技術を持つ企業で高い技術を学べることは大きな喜びだ」と笑顔で話す。
詳細はこれから詰めるが、5人程度の受け入れから始める見通しだ。初弾の人材は長大での採用を想定している。その後、人・夢・技術グループの傘下企業に広げて、将来的には日本の建設会社などグループ以外への展開も目指す。

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