草彅剛はなぜ“いい人”でいられるのか? 『トークィーンズ』出演で浮き彫りになったこと

草彅剛が5月23日放送のトークバラエティ番組『トークィーンズ』(フジテレビ系)に出演した。

こういった番組に関する記事には「押しが強くて個性的な“最強女子軍団”を前に草彅も思わずタジタジ」みたいな見出しがつくのが定番だが、そうとはならず! この日のゲストとして呼び出されるやいなや、草彅はレギュラー出演者の指原莉乃らに「久しぶり」「元気?」とまるでMCのごとく近況を聞いていき、若槻千夏から逆に「元気ですか?」と振られると「元気がないとこの世界、生きていけない!」「こんなに美女に囲まれて、楽しいですね」「フジテレビ、こんなに楽しかったっけ?」と、ものの数分で草彅ワールドが広がり、“最強女子軍団”を圧倒した。

そんなこの日の『トークィーンズ』は、“草彅剛検証回”として非常に興味深い内容だった。番組でも紹介されていたが、草彅のイメージと言えばやっぱり“いい人”。それは1997年に主演したテレビドラマ『いいひと。』(フジテレビ系)のなかで、「自分の周りの人の幸せが自分の幸せ」と考える北野優二役を務めた影響による部分が大きいだろう。しかし同役にしても、当時から草彅はSMAPのなかでも“にこやかタイプ”だったことから、ぴったりとハマるものだった(ただ、意外と毒っけがあることは1998年放送開始『「ぷっ」すま』(テレビ朝日系)などではっきりと浮き彫りになっていったのだが)。

■稲垣吾郎に対して「ふざけんなよ!」と感じた出来事とは?

『トークィーンズ』ではあらためて「草彅剛はいい人なのか」について、放送作家の野々村友紀子が草彅本人におこなった事前インタビューをもとに明かされていった。草彅は、「タクシーに乗って(行き先を伝えても)運転手さんが返事しない時」「北京ダックを女性と食べに行った時、皮の端のほうを残すのを見て『なんでおいしいところだけ食べて、味のついてない皮を残すんだ』って。好意があったんですけどちょっと萎えてしまって」などちょっとしたイライラ体験を振り返った。

なかでも、「ふざけんなよ!」と感じるくらいイライラしたのが、稲垣吾郎に対するもの。最近、稲垣、そして稲垣が出演した映画のスタッフと3人で食事に行った際、草彅がその作品をまだ鑑賞していないにもかかわらず、その映画のネタバレを食らったそうで、さすがに「なんで言うんだ!」と思ったと話す。

ほかにも、“最強女子軍団”とさまざまなイライラのシチュエーションについてトーク。草彅は「ちょっと違和感があるけど怒ってはいない。イラッくらいはするかもしれないけど」とし、もし日常で誰かに対して違和感を持った時は「その方のためにもなるから言ってあげたほうがいい」「そこで(自分が)イライラしたら相手の成長につながらないわけじゃん」と、もし怒りが沸いてきそうになったら次の展開を自分なりに考えて行動に移すのが得策だと語った。

■草彅剛は自分のメンタルのコントロール方法を知っている

次に「草彅のプライベートがミステリアス」だとし、履かないデニムパンツを旅先などに数本持参する噂について尋ねられた。草彅は「安心するんですよね。ホテルの部屋って初めてのところが多くて、そわそわして寝れないんですよ」「4つくらい持って行って、結界みたいに張って『俺は守られている』って」「好きなヴィンテージ(パンツ)とか楽屋に飾って。やりません? なんでやんないの?」とすべて事実だと言った。

さらに撮影現場などには、お手製の味噌汁を魔法瓶に入れて持参。撮影が殺伐としている時は、味噌汁を飲んで自分を落ち着かせるのだという。またフルーツも「幸せな気分になる」ということから持っていき、撫でたりするのだそう。この日の番組収録には、りんご、ナッツ、味噌汁を自宅から持ってきたと話した。

「イライラした時の自分への言い聞かせ」や「履かないデニムパンツを旅先へ持参する理由」の理由を聞いて、導き出された草彅のポテンシャルがひとつあった。それは「自分のメンタルのコントロール方法を知っている」という点だ。

あくまで草彅は“いい人”であって、“お人好し”ではない。だから当然、不安になったり、戸惑ったりすることはある。北京ダックのエピソード然り、対人関係に関しても自分に合わないところがあれば、ちゃんと好き、嫌いが表に出る。何があってもオールOKというタイプではないのだ。だからちょっとはイライラしたりする。

しかし、その「ちょっと」で抑えられるのが草彅の人間的な魅力である。自分のなぐさめ方や気持ちの落ち着かせ方を知っているから、怒りや不満の感情を大爆発させずに「ちょっと」でやりすごせるのだ。これは、本当の意味で“強い人”でないとできないこと。人間は自尊心があるので、ついつい「ナメられたくない」「やられたらやり返せ」になってしまいがち。しかし草彅は、「まあ自分のなかでこういうふうに思っておけばいいか」と気持ちを軽くする能力に長けている。そのうえで、メンタルが落ち込まないように自分で自分を労われる。だからこそ番組を鑑賞しながら、「草彅のような人と仲良くなりたい」と何度も思えた。

■草彅剛の発想の変換、イメージギャップも「どうでもいいと思っています」

そういったことのすべてが集約されていたのが、主演映画『碁盤斬り』にちなんで「濡れ衣を着せられた過去」「誤解された過去」について草彅が語った番組後半だ。

草彅の“いい人”もそうだが、芸能人はいろんなイメージづけをされる。それは時に、本人が思ってもいない見られ方をされることも。草彅はそれについて「常に俺らの仕事ってそうじゃないですか。見る人の気持ちって自分でコントロールできないじゃないですか。だからどうでもいいと思っています」とした。ただそれは決して投げやりな考え方ではなく、「勘違いされて好きになってもらえるかもしれないから」と、捉え方次第でなんでもポジティブな方向へ変えることができるというのだ。

いとうあさこが「浅田真央さんに似ていると言われたことがあって。そうしたら自分で言ったわけじゃないのに『似てない』『(動きを)寄せにいってる』とか言われて」という旨を話した時も、草彅は「芸人としてはおいしいじゃないですか」と前向き受け止めることをすすめ、若槻が中居正広の番組出演時にセット裏で待機して小さい声で喋っていたところ、中居から笑い声の大きさを注意されたと回想すれば、「若槻さん、“存在力”があるから。タレントとしてはめちゃめちゃいいじゃないですか」とも。まさに物事は自分自身の変換の仕方次第である。

ただ、そんなアドバイスを聞いた若槻が「次、(中居に)怒られたら『剛さんが、大丈夫だって言ってました』って言います」と口にすると、草彅は「それはやめて」とピシャリ。そうやってなにかに巻き込まれないようにするのも、いかにも草彅らしいところだったのではないだろうか。

(文=田辺ユウキ)

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