日本の国会議員はほかの国より多い?減っていない? 世界と比べてみたら(原口和徳)

政治資金規正法をめぐる議論が、国会の主要テーマとなっています。

「政治と金」について論じるとき、しばしば目にするのが「日本には政治家が多すぎる」との主張です。思わず、首を縦に振りたくなってしまいますが、ちょっとまって。

日本の政治家の人数は、「なにと比べて」多いのでしょうか。海外や過去と比べてみて、評価の基準を作ってみませんか。

国会議員数、日本は世界で第8位

列国議会同盟(Inter-Parliamentary Union)の集計によると、2024年4月時点で国会議員が多い国のトップ3は、中国(2,977人)、イギリス(1,435人)、フランス(925人)となります。そして、日本(712人)は8番目に国会議員が多い国となっています。

表1_国会議員数国別ランキング(画像をクリックすると拡大します)

対象をG7に絞って比較してみます。G7の中では、日本の国会議員数はイギリス、フランス、ドイツに次ぐ4番目になります。なお、G7は各国とも二院制をとっています。

人口の影響を加味してみると?

人口規模の影響を考慮するために、国連人口基金による「世界人口白書2024」のデータを用いて、人口100万人当たりの国会議員数を算出、比較してみます。

日本の人口100万人当たり国会議員数は5.8人となり、人口上位20か国の中で多いほうから数えて5番目に位置しています。ただし、比較対象をG7に変更すると、日本の順位は、イギリス(21.1人)、フランス(14.3人)、カナダ(11.1人)、イタリア(10.3人)、ドイツ(9.7人)につぐ6番目(少ないほうから数えて2番目)になります。なお、ヨーロッパは、スウェーデン(32.6人)、ギリシャ(29.1人)、スイス(27.6人)など、人口100万人当たりの国会議員数の多い国が多い傾向にあります。

日本の比較対象を地域や人口規模など、どのような条件で設定するのかによって、評価結果が変わってくることは、押さえておきたいポイントです。

日本と異なり、議員定数が増えた国も。過去30年間の議員定数削減状況

議員定数削減の動きについても確認しておきましょう。

1994年を起点として、ここ30年間の各国の議員定数について、G7とオーストラリア、スウェーデン、メキシコの議員定数を比較したものが表2です。

表2_各国下院における過去30年間の議員定数削減状況(画像をクリックすると拡大します)

対象となった10か国のうち、議員定数が減っているのは日本を含む3か国であり、議員定数が増加している国も4か国あることがわかります。また、日本の議員定数の削減率(6.6%)はイタリア(35.9%)、イギリス(22.8%)に次いで3番目に大きい値になっています。

定数削減の内訳をみると、イタリアは上院、下院ともに大幅に削減、イギリスは主に上院(貴族院)で削減、日本は主に下院(衆議院)で削減しています。イギリスの上院は原則無給ですので、仮に有給の国会議員の削減数、削減率だけを比較すると、日本はイタリアに次ぐ2番目に削減を進めた国になります。

なお、イタリアは2020年の国民投票によって大幅な議員定数の削減を実現していますが、100万人当たりの国会議員数は2024年4月時点で10.3人と日本(5.8人)の倍近い人数になっています。

(注)表1(実際の議員数)と表2(議員定数。欠員の分もカウント)では集計対象が異なっていますので、ご注意ください。

議員定数を減らすだけで、議会は効率的なものになるの?

表2の結果からは、日本は議員定数の削減に積極的に取り組んでいる国の1つであると評価することもできそうです。

ただ、上記の比較では抜けてしまっている視点もあります。

例えば、議員報酬について考えてみましょう。そもそも、議会の規模が大きくても、議員に支給される報酬が少なく、トータルではほかの国よりも安価な議会となっているならば、議員を減らさなくてもよいと考える人もいるのではないでしょうか。

また、議会の役割ではどうでしょうか。例えば、上院と下院で審議する内容が分かれている国からすると、上院(日本では参議院)と下院(日本では衆議院)が同じ政策について、同じようなプロセスで審議している国は、議会の規模に関わらず重複(無駄)が発生しているように見えるかもしれません。

このように、「もっと無駄がなくて機能する議会であってほしい」と思った時に取りうる手段は「議員数の削減」だけではない可能性もあります。

いくつかの国、地域を取り上げただけでも議員定数に関するスタンスの違いが見えてきます。このようなほかの国の取り組みは、自分のなかで評価の基準を作っていくときに役立ちます。例えば、旅行や仕事でいつか行ってみたい国や地域がある人は、それらの国の取組と比較してみると、日本にはどんな特徴が見えてくるでしょうか。

評価基準は、ご自身の経験とともに日々変わりえるものです。日々のアップデートを楽しみながら、時々、より良い(よりましな)政治の仕組みについて、考えてみませんか。

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