「EVゼロ関税」適用範囲さらに拡大…フィリピン「カーボンニュートラル」最新動向

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一般社団法人フィリピン・アセットコンサルティングのエグゼクティブディレクターの家村均氏が、フィリピンの現況を解説するフィリピンレポート。今週は、フィリピンで進むグリーン政策の最新動向とともに、フィリピン経済の成長のために何が課題なのか、フィリピンの有力財閥のトップの発言をみていきます。

電動バイク、ハイブリッドカーなどへの「税制優遇措置」を承認

フィリピンの経済開発当庁(NEDA)は、電動バイク、電動自転車、ハイブリッドカーなどに対する税制優遇措置を承認しました。政府は、グリーン輸送を促進し、カーボン排出量を削減することを目指しています。

マルコス大統領が委員長を務めるNEDAの理事会は、2028年までの電気自動車(EV)関税を一時的にゼロにする大統領令(EO)No.12の適用範囲を拡大することを承認しました。このゼロ関税政策では、電動バイク、電動自転車、ニッケル水素蓄電池、電動トライシクル、ハイブリッドEV、プラグインハイブリッドEV(PHEV)ジープニーやバスを対象とすることになりました。また、EO12が現在カバーしている34種類のバッテリーEVに対するゼロ関税政策も維持することに合意しました。

マルコス大統領は2023年2月、EVとその部品に対する関税を5年間一時的に撤廃するEO12に署名しました。しかし、この大統領令には二輪EVとハイブリッド車は含まれていませんでした。ちなみに大統領令発令以前は、EVの関税率は5%から30%でした。

EO12は、フィリピンのEV市場を刺激し、新技術への移行を支援し、輸送システムの化石燃料依存度を低下させ、道路輸送による温室効果ガス排出量を削減するように設計されています。フィリピン政府は、パリ協定に基づき2030年までに温室効果ガス排出量を75%削減することをコミットしており、より環境に優しい輸送手段を推進しています。EV関税の撤廃延長は、EVインフラ整備への積極的な動きにもつながります。

フィリピン商工会議所会長のGeorge T.Barcelon氏は、EO12はフィリピンが独自のEV製造ハブを開発するのに役立つだろうと述べ、他の国はすでに製造に着手しており、我々も追いつくことが必要だとしています。

比経済の成長ドライバーとなる「教育」「製造業」「観光業」の課題

フィリピンの有力財閥のひとつであるJGサミットのトップ、ゴコングウェイ氏は「フィリピンの経済成長にとって重要な教育、製造業、観光業の可能性を政府と民間が一体となって推し進めるべきだ」と語りました。また、人的資本、製造業、観光業のさらなる成長を支えるための物理的インフラと技術的インフラの重要性を指摘しています。

ゴコングウェイ氏は、フィリピンの若者はテクノロジー主導の経済についていくためのスキルを身につけるべきであり、教師は科学、技術、工学、数学分野でスキルアップやリスキルを行う必要があるとしています。そして、十分な能力を備えた労働力がいれば、政府と企業は、世界的な資本を自信を持ってフィリピンに誘致することができると述べています。

さらに製造業の活性化が、経済を後押しするための重要な課題だと指摘しています。製造業経済への移行は、新興の産業・技術分野の要求を満たすことができる労働力を育成する国の能力にもかかっています。

また、フィリピンの経済成長計画には、観光収入の増強も重要であり、自然の美しさ、心優しい人々、そして理想的な立地、これらは、国内総生産に多大な貢献をすることができ、フィリピンは、観光大国になるため完璧な材料が揃っているとしています。

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