あざとい仕草“上目遣い” なぜ可愛い?  「擬似的赤ちゃん顔」「行う場合は注意も必要」と専門家

上目遣いが「可愛い」と思われるのにはワケがある

森香澄さんや松村沙友理さんの活躍から、彼女らの魅力に対して賞賛を込めて人々が口にする言葉、“あざとい”。辞書で引くと「抜け目がなく貪欲である」「小利口」などの意味がありますが、現在では一般的に「気を惹くために可愛らしさをアピールした言動」という意味で使う人が多いのでは。

【写真】相手をより惹き付ける!?「カップの持ち方」 名誉教授が紹介

さて「あざとい行為」と言えば代表的なものに“上目遣い”がありますが、なぜ人を惹きつけ可愛く見えるのでしょうか? また、他にあざとい動きとはどのようなものがあるのでしょうか? 専門家に話を聞きました。

【上目遣いはなぜ可愛く見える?】

東京未来大学こども心理学部の小谷博子准教授は「上目遣いは無意識に赤ちゃんを真似た行為となっています」と言います。「赤ちゃんの顔は、『体に対して目が大きい』『すべてのパーツが顔の低い位置、かつ真ん中に寄っている』『顔面を占める額の割合が大きい』という特徴があり、この特徴によって条件反射的に保護欲を感じさせるのです。上目遣いは正面から見た時に比べて、遠近法により自身の顔を赤ちゃんの顔の特徴に近づけさせることができます。上目遣いは疑似的に赤ちゃんを真似ることで、相手の『守ってあげたい』という“保護欲”を刺激するのです」(小谷准教授)

例えば、自撮りの際にカメラを自身の斜め上に掲げて撮る人がいます。これは上目遣いと同様に赤ちゃんを疑似的に真似ることができ、「無意識にその角度で構える人は、そうすれば可愛く見えることを本能的に知っているのかも」と小谷准教授。

ただし、上目遣いを使う上での注意点も。「誰でも上目遣いをすれば可愛く見えるかと言うと……そうではありません。最近の研究では10〜20代の女性からは『ラクトンC10・C11』という香りの成分が分泌され、これは年齢を重ねるごとに減少していくことがわかっています。保護欲は“若さならではの要素”が相まって刺激されるのだと考えられます。あざとさは10代〜30代前半くらいまでの魅力であり、それ以降はまた別の魅力を備えなくてはいけないと考えられます」(小谷准教授)

【上目遣いのほかに人を惹きつける行為とは?】

「一手間加える所作が人を惹きつける」と、言語以外のコミュニケーションについて長年研究している大阪大学の大坊郁夫名誉教授は言います。

「髪を右耳にかける時、普通は右手を使いますよね。ですが、あえて左手を使うことでより魅力的に見えます。『クロスの仕草』とも言いますが、“わざわざクロスさせる”ということがポイントなのです。一見非効率的な仕草が、相手を“おっ”と思わせ惹きつけるのです」(大坊名誉教授)

また、落とした物を拾う時に正面からそのまま拾うのではなく「体を捻って拾う」、カップを持ち上げる時に片手ではなく「両手を使う」なども“一手間加えた所作”に当たるよう。大坊名誉教授は「上目遣いもこうした非効率な所作の一つ」であると述べました。

「相手を惹き付ける所作」を紹介した上で、大坊名誉教授も注意を促します。「上目遣いなど、保護欲を刺激する行為は相手との関係性があって成立するものです。元は赤ちゃんが親に対して行う行為であることから、先輩と後輩・上司と部下といった関係性や年齢を考慮しない上目遣いは逆効果」とのことでした。

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可愛さは認めざるを得ないものの、使う側も使われる側も「上目遣いの仕組み」を理解しておいたほうが良さそうです。

(取材・文=宮田智也)

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