【5月27日付編集日記】漬物

 道の駅や農産物直売所を訪れると、必ずといっていいほど漬物売り場に目が向く。農業が盛んな本県だけあって漬物も多彩。地元の野菜を使った梅干しや甘酢漬け、キムチなど多くの品が並び、どれにしようか、目移りする

 ▼文字通り手塩にかけた野菜をおいしく食べてもらおうと、生産者は漬物を売り場に並べてきた。塩、みそ、こうじのどれで漬け込むか。塩気の濃さや発酵の具合次第でも味は大きく変わる。その違いが消費者の選ぶ楽しみにつながっている

 ▼総菜や酒のさかな、お茶請けと食卓を彩り、郷土食とも呼べる漬物だが、直売所などに出品する農家が減っているようだ。食品衛生法の改正で、漬物の製造がこれまでの届け出制から許可制に変わったためだ

 ▼今月で経過措置期間が終わり、変更前から出品していた農家であっても、厳密な申請手続きや衛生管理が求められるようになる。JAふくしま未来によると、設備投資の費用が負担となり、高齢などの理由も重なって漬物の製造を諦めた農家がいたという

 ▼法改正のきっかけは漬物が原因の食中毒だった。衛生管理の徹底は当然のことながら、このまま農家の味が食べられなくなっていくとすれば、何だかやるせない。

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