「大分予科練資料館」36年の歴史に幕 現地で閉館式、収蔵品移設へ寄付募る【大分県】

閉館式に参列した関係者ら=26日、大分市上野丘の大分予科練資料館
移設費用をクラウドファンディングで募っているゼロ戦のプロペラ(手前)、予科練の碑(後方)と資料館を運営してきた川野孝康さん

 元特攻隊員の故・川野喜一さん(享年95)が開いた「大分予科練資料館」(大分市上野丘)が36年の歴史に幕を下ろす。26日、現地で閉館式があった。太平洋戦争で亡くなった特攻隊員の遺書や、当時の飛行服といった収蔵品の一部は県護国神社に移す。零式艦上戦闘機(ゼロ戦)のプロペラなど大型の展示品の移設費用を捻出するため、同館はクラウドファンディングで寄付を募っている。

 式には約20人が参列。同神社の八坂秀史宮司が祭詞を述べ、喜一さんの長男孝康さん(68)らが玉串をささげた。

 資料館は、特攻出撃の直前に終戦を迎えた喜一さんが「悲惨な戦争を伝え、戦友を慰霊しよう」と1988年に自宅を改装し開設した。特攻隊員の遺書や当時の装備品など約3千点を収集して展示。子どもたちの平和学習の場としても活用されてきた。

 2021年8月に喜一さんが亡くなってからは、市内に住む孝康さんが仕事の合間を縫って来館者を迎えてきた。ただ後を継ぐ人はおらず、貴重な資料が散逸する恐れもあることから、同神社に展示品を寄託し閉じることにした。

 一般見学の受け入れは原則として終了。今後、県内の在野の研究者らでつくる「豊州戦史研究会」の協力も得て、収蔵品の整理と移設を進める。

 課題となるのが、大型の展示品の運び出し費用。資料館の入り口には、戦時中に使われたゼロ戦や一式陸上攻撃機のプロペラ(直径約3メートル)、石造りの「予科練の碑」(高さ2メートル)が並んでいる。

 いずれも重量があり運搬に多額の費用が想定されるため、次男の浩二さん(61)=川崎市=が200万円を目標に6月28日までクラウドファンディングを実施する。現在、120万円ほどが集まっているという。

 県護国神社は戦後80年となる来年、引き受けた収蔵品の一部を公開する予定。浩二さんは「二度と戦争を起こしてほしくないというのが父の願いだった。資料がこれからも残り、閉館後も父の思いが引き継がれることを願っている」と話した。 

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