錦織圭、復帰戦となった全仏OPで約2年9カ月ぶりの四大大会勝利!4時間22分の死闘を制し「勝ち切れたのはいい経験になる」<SMASH>

現在開催中のテニス四大大会「全仏オープン」は大会初日の現地26日に男子シングルス1回戦が行なわれ、ケガからの完全復活を期す元世界ランク4位の錦織圭(現350位)が登場。予選勝者のガブリエル・ディアロ(カナダ/同166位)を7-5、7-6(3)、3-6、1-6、7-5のフルセットで下し、同大会3年ぶり11度目の2回戦進出を決めた。

日本のエースがグランドスラム(四大大会)の舞台に帰ってきた。今大会が2021年9月の全米オープン以来約2年9カ月ぶりの四大大会出場となった錦織。また全仏出場も21年以来実に3年ぶりで、今回はプロテクトランキング(負傷離脱前の順位でエントリーできる救済措置)48位を活用して参戦している。

3月のマイアミ・オープン(ATP1000)以来約2カ月ぶりの実戦となったディアロとの1回戦では、ブランク明けとは思えないほどの素晴らしいパフォーマンスを披露。最後は錦織らしい勝ち方で試合を締めくくった。
錦織は立ち上がりから203センチの長身を誇るディアロのサービスを次々と返球し、ドロップショットやリターンエースポイントを見せてリズムをつかんでいく。第4ゲームで先にブレークを許してからも錦織は深く突き刺さるバックハンドやフォアのカウンターなど得意のショットを駆使して応戦。第6ゲームではブレークバックのチャンスを迎える。

ここは生かしきれなかったものの第9ゲームでは錦織がじっくりと相手を追い込んで勝負所を制しブレークバックに成功。第11ゲームでもブレークを奪うと、続く第12ゲームは0-30からサービスをキープして第1セットを先取する。勢いそのままに第2セットでは第1ゲームで正確なリターンを起点にディアロのサービスを破った錦織。だが第2ゲームでは反対にディアロのアグレッシブなリターンに苦戦しブレークバックを許してしまう。

その後は互いにキープを継続する緊迫の展開。4-5で迎えた第10ゲームでは錦織が相手のブレーク及びセットポイントを何とかしのぎ切ってキープすると、第11ゲームではコートを広く使うストロークと低く滑るバックのスライスを起点に値千金のブレークを奪う。サービングフォー・ザ・セットとなった第12ゲームは取り切れずにタイブレークに突入するも、ここでは錦織がギアを上げて順調にポイントを重ね、接戦の末に第2セットを奪取して勝利に王手をかける。
ところがここからゲームを重ねるにつれて錦織の淡泊なミスが増加。疲労の影響からか相手の強力なショットに対応できない場面も目立ち、第6ゲームから立て続けに4ゲームを失って第3セットを落とす。その後もディアロの勢いを止められず2つのブレークを喫してセットオールに。第4セット終了時には錦織が臀部あたりの違和感を訴えてメディカルタイムアウトを取り、体力的にもこの段階で万事休すかと思われた。

それでも日本のエースは諦めていなかった。勝負のファイナルセットでは第1ゲームこそディアロの強打を受け止められずにブレークを喫した錦織だったが、第2ゲームでは4度のデュースを経て起死回生のブレークバック。膠着状態が続いた中で迎えた最終第12ゲームでは錦織が奇襲を仕掛ける。自身のフォアのウイナーや相手のミスで30-30とすると、続くポイントで意表を突くリターンダッシュを見せてマッチポイントを取得。最後はディアロのフォアの逆クロスがロングアウトとなり、4時間22分の死闘をものにした。
死力を尽くして価値ある勝利をつかみ取った錦織は試合後のWOWOWのインタビューで疲労困憊な様子を見せながら開口一番「早くロッカーに帰りたい」とコメント。続けて「第3セットからは相手が別人のように強くなったから、負けていてもおかしくなかった」と試合内容を振り返りつつ、「接戦を勝ち切れたのはいい経験になるのかなと思う」と喜びを語った。

苦しみながらもグランドスラム復帰初戦を白星で飾った錦織は2回戦で第15シードのベン・シェルトン(アメリカ/15位)とユーゴ・ガストン(フランス/88位)のどちらかと勝者と対戦する。フィジカル面は心配ではあるが、次戦も錦織がどんなプレーを見せてくれるのか注目しよう。

文●中村光佑

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