医用画像関連システム市場に関する調査を実施(2023年)~2022年度の医用画像関連システム市場規模は前年度比4.3%減の573億1,900万円~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越 孝)は、国内の医用画像関連システム市場を調査し、セグメント別の市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

本調査では、主に病院で使用される医用画像関連システムのうち、Radiology PACS(Picture Archive and Communication Systems)、Cardiology PACS、3Dワークステーション、放射線情報システム(RIS:Radiology Information System)・治療RIS、検像システム(Quality Assurance System)、線量管理システム(Dose Management System)を対象として、市場規模を算出した。

医用画像関連システムの中心となるRadiology PACS(以下、「PACS」)は、新規導入からリプレイス中心の市場へ移行しており、ゆるやかなマイナス成長が続いている。また、RIS・治療RISや検像システム等のPACS周辺システムについても、既に普及が進みリプレイス中心の市場になっており、PACS関連市場は概ね横ばい基調となっている。

2022年度の医用画像関連システムの市場規模(事業者売上高ベース)は、前年度比4.3%減の573億1,900万円と推計した。市場規模減少の主な要因のひとつとしては、コロナ禍に伴うシステム導入・更新の遅延などから回復した2021年度市場規模が同6.6%増の成長であったことへの反動による減少と推測する。加えて、線量管理システム市場は2019年度から線量管理等の義務化がはじまった2020年度に拡大したものの、その後は大幅な減少トレンドにあることも影響している。

2.注目トピック~Radiology PACSの市場動向

Radiology PACSは、診療報酬改定によりフィルムレス化・PACS導入が進んだ2009年度以降、急速に導入率が上昇し、市場の大半はリプレイス中心で形成されている。

このような市場環境の中、市場全体としてはコロナ禍の影響は軽微であり横ばい傾向が続いている。PACS導入率と施設数推移を勘案した今後の推移は、中~大規模施設の市場は横ばいから微減、小規模施設(診療所含む)は一部システム化案件があり微増の傾向で、全体では横ばいから微増傾向が見込まれる。実際に、診療所を含めて幅広く製品展開のある企業の実績は基本的に堅調である一方、病院(特に大規模施設)中心に展開の企業は実績のピークアウトがみられる。

3.将来展望

2023年度以降はコロナ禍等の影響もなくなり、また市場の大半はリプレイス中心で形成されていることから、医用画像関連システムの市場規模は600億円前後で横ばい傾向での推移を予測する。

そのような市場環境の中、医用画像関連システムベンダーの多くは、画像診断関連のAIサービスを手掛けるようになっている。さらに、PHRサービス(医用画像を含む病院内の医療情報等を患者がスマートフォン等を通じて参照できるサービス)、デジカメ画像管理関連、病理画像関連事業など多様なソリューションへの取り組みが拡大しており、こうした動向は今後加速していく見通しである。

© 矢野経済研究所