「入浴介助に男性が来た時は泣いた」女性障害者の性被害、どんな支援が必要なのか

女性障害者の性被害をテーマに開かれた学習会(京都市上京区・同志社大)

 女性であり、障害者である―。そんな複合的な「困難」を抱える女性障害者の性暴力被害を考える学習会(DPI女性障害者ネットワーク主催)が、京都市内であった。弱い立場にある女性障害者は性被害を受けやすく、支援にも課題が多い。京都の当事者や支援者が、障害者の性被害に求められる支援の在り方を考えた。

■立場が弱く、声を上げづらい女性障害者

 加害者と被害者の力関係を背景に、密室で行われる性暴力。被害者には障害があるケースが少なくない。特に立場の弱い女性障害者は声を上げづらく、被害者である自覚も持ちにくい。背景には、障害者が家族や施設に頼らざるを得ず、性を持つ存在として認識されていないことも関係している。

 被害者の総合的なケアを担うのが、各都道府県の「ワンストップ支援センター」。ただ受け付けが電話のみなど、多くの拠点で障害者はアクセスしづらい課題がある。人員や資金に課題を抱える拠点も多く、身体や知的、精神といった障害の特性に応じた対応は手探りで行われている。

 そんな中、「京都性暴力被害者ワンストップ相談支援センター」(京都SARA、京都市)では2年前、2人の女性障害者が支援員に加わった。NPO法人京都頸髄(けいずい)損傷者連絡会の村田惠子会長(62)と、日本自立生活センターの香田晴子代表(62)。障害当事者の支援員は全国でも珍しいという。

 学習会では、村田さんと香田さんが、女性障害者の支援について当事者視点でアドバイスする活動の内容を報告した。村田さんは「私たちが積極的に他の支援員と話すことで、障害者が特別な存在でないということを分かってもらえる。障害者がピア(仲間)な立場で関わることを、社会資源の活用として捉えてほしい」と話した。

■「性を持たない存在」と扱われる残酷さ

 村田さんは41歳の時に事故に遭い、車いすで生活するようになった。学習会では病院で男性看護師から入浴介助を受けた経験にも触れ、「障害者が性を持たない存在として扱われることを残酷に感じた。(障害者が)性について話せる場所を作って障害女性の困難を知ってもらい、相談のハードルを下げたい」と力を込めた。

 脳性まひで運動障害と言語障害がある香田さんは、「障害者にとって今の支援センターは相談しても向き合ってもらえない、信じてもらえない場所」と指摘。「障害者の支援員がいるというだけで『相談してみよう』と思う人が出てくる。全国のセンターに障害当事者の支援員を置いてもらいたい」と訴えた。

 京都SARAではこれまでも、▽聴覚障害者に筆談でカウンセリングを行う▽視覚情報の方が分かりやすい発達障害者には事前に相談内容を紙にまとめる―といった対応を行ってきた。一方、被害者本人の意思確認が不十分に終わったケースもあったという。現在は障害者支援の研修を行うほか、リーフレットにメールの窓口があることを併記するなどバリアフリー化も進めている。

 京都SARAを運営する「ウィメンズカウンセリング京都」の井上摩耶子さんは「障害がある人が1人で来所できることが大切なのに、これまで考えが至っていなかった。当事者が支援に関わることは重要。2人と話し合いながら引き続き考えていきたい」と語った。

■望まない「異性介助」は「性的虐待」だ

 学習会では、病院や施設などで障害者本人の意思に反して異性が入浴や排せつなどの介助を行う「望まない異性介助」も取り上げられた。

 脳性まひがある佛教大大学院生の森本京華さん(24)は、20歳で初めてヘルパーを利用するまでの経緯を振り返った。なかなか条件に合うヘルパーが見つからない中、相談員から提案されたのが「女性」という条件を外すことだったという。

 当時は異性介助という言葉を知らず、後に本でさまざまな課題を知った。「あの時は男か女か考える余裕はなかったが、異性介助のリスクを知り、一人の女性として自分の意見を持つことが大事だ」と力を込めた。

 国は異性介助を「心理的虐待」に分類している。筋ジス病棟の未来を考えるプロジェクトのメンバー岡山裕美さん(44)は「入浴介助に初めて男性が来た時は泣いた」「男性でも良いと納得しないと心が保てない」といった当事者の声を紹介。「望まない異性介助は性的な侵害。より強い語感の『性的虐待』として認識されるべき」と訴えた。

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