日本は量産型ファッション? イギリスやフランスの街行く人を見て日本人女性が感じた、スタイルの違いとは

あまり見かけなくなった表参道でのストリートスナップ撮影。さまざまなスタイルの人に出会った場所(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

ロンドンやパリと聞くと、頭に浮かぶのはラグジュアリーブランドの本場であることや、パリ・コレクションなどが開催されているファッションの最先端といった華やかな側面ではないでしょうか。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。29回目は、イギリスやフランスで実際に暮らして感じたおしゃれへの意識を紹介します。

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日本のファッションはユニーク?

日本の出版社で、ファッション誌に携わっていた私。展示会やファッションシューティング、ストリートスナップ撮影などで、朝から夜まで慌ただしく過ごしていました。

目まぐるしく変わるファッションのトレンド。次に流行るのはこのシェイプ、このカラー、モデルの間で話題になっているアイテムなどなど、あふれんばかりの情報の波を追いかけることが仕事でした。

当時はなんとも思っていませんでしたが、10年以上経った今振り返ってみると、経験していて良かった経験があります。それはスナップ撮影。原宿や表参道などの街頭で、おしゃれな人に声をかけて撮影させていただくあれです。

悲しいことに、今は紙の雑誌が衰退してスナップ撮影も下火に。ファッションやスタイリングは、SNSなどで自ら投稿する発信型が多くなりましたよね。日本に帰国して表参道などを歩くと、当時の思い出がよみがえり、スナップ隊らしき人々をまったく見かけなくて少し寂しいなと思うことも。

では、なぜそのスナップ撮影が楽しかったかというと、個性豊かな人たちをたくさん見ることができたからです。確かに、流行りのアイテムを要所に取り入れてトレンドを押さえているのですが、そこに自分なりのポイントを加えている人の多いこと。

当時は「量産型ファッション」という言葉が流行っており、服装が画一化されていることを揶揄する声もありました。しかし、街行く人一人ひとりに目をやると、バラエティ豊かなファッションを見かけることが多かったように思います。

ロリータ系ファッションから、ロック系などエキセントリックなアイテムを着こなす人も。コスプレイヤーを見かけることもありました。

日本は型にはまったファッションをしていると、日本人自身が思いがちです。確かに、30代だからもう足は出せない! などと年齢を気にしたスタイルや、TPOを遵守する姿勢は強いかもしれません。でも見方を変えれば、日本には自由にファッションを楽しめる土壌や、幅広いアイテムが際限なくそろっているように思います。

意外に落ち着いた色合いのファッションの人が多い、冬の街の様子【写真:Moyo】

イギリスやフランスで見かける人のスタイルは

日本に対して、そんなふうに改めて思うようになった理由は、イギリスやフランスに移住して道ゆく人々を観察したからでした。年齢を気にせず、自由なファッションを楽しんでいるイメージが強いですが、そのおしゃれさには少し統一感があるというか、方程式があるような気がしたからです。

カラフルな色使いやバランスの取り方、小物の取り入れ方など、本当に素敵なスタイルの人が多いのですが、そのベースにはシンプルでシックなスタイルがあると思います。

私の目についた人だけの話なので、もちろん一概には言えませんが、相対的におしゃれながらもどこかオーソドックス。冬もウィンドブレーカーやダウンなどが圧倒的に多く、それにぴったりめのジーンズとブーツを合わせるといった格好が一般的です。

独創的でユニークなファッションスタイルももちろん見かけますし、要所要所で爆発的なトレンドアイテムをみんな着こなしたり持っていたりしますが(バレルレッグジーンズに、「ビルケンシュトック」のボストン、「ドクターマーチン」の厚底サンダル、「ボッテガ・ヴェネタ」のカセットバッグなど、アイコニックなアイテムは瞬時に流行っていました)、全体的には変わらないスタイルが多い気がします。

こういった点から、さまざまなファッションスタイルやトレンドを、意外に日本のほうが思い思いに楽しんでいるのかもしれないなと思います。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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