アングル:米株、例年以上の「夏枯れ」か 物価と大統領選巡る不透明感で

David Randall

[ニューヨーク 23日 ロイター] - 米株式市場は例年「夏枯れ」が起こりがちだが、今年は根強いインフレ懸念や米大統領選の討論会などが重なり、特に上値が重くなる可能性がある。

S&P500種総合指数は年初から12%近くも上昇し、過去最高値に接近している。しかし投資家は、向こう数カ月間も上昇が続く可能性は低いとみる。

歴史的に見て、夏場は米国株にとって最も低調なシーズンだ。CFRAリサーチがまとめた1945年以降のデータによると、S&P500が6―8月に上昇した確率は56%にとどまる。トレーダーが休暇を取り、投資家は秋の決算シーズン待ちで売買を手控えることが、夏枯れの理由としてよく挙げられる。

今年の夏は、利下げのタイミングや米大統領選を巡る不透明感という逆風も加わる。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティテュートのシニア・グローバル・マーケット・ストラテジスト、サミーア・サマナ氏は「現時点で、市場はかなり割高になっている。それに、今から7月にかけて全ての好条件がそろわなければ米連邦準備理事会(FRB)は利下げをしそうにない」と指摘。「これ以上の大幅高をもたらす材料はあまり見当たらない。従って夏場特有の低調さに今年は拍車がかかるだろう」と語った。

これから年末にかけては、インフレ指標が市場を動かす主な要因になりそうだ。米国債利回りと、国債の株式に対する相対的な魅力が決まってくるからだ。

S&P500の予想利益に基づく株価収益率(PER)は現在21.6倍で、昨年10月の17.5倍から上昇している。当時、10年物米国債利回りは約2年ぶりの高水準を付けていた。

市場は現在、FRBが12月末までに35ベーシスポイント(bp)の利下げを行うことを織り込んでいる。

しかし6月か7月のインフレ指標が再び高い数字となれば、その期待も消えかねない。最新の個人消費支出(PCE)価格指数は31日に、消費者物価指数(CPI)は6月12日に、それぞれ発表される。

ネッド・デービス・リサーチの首席米国ストラテジスト、エド・クリッソールド氏は「利回りが急上昇し、FRBが利下げを実施しそうにないとなれば、投資家は債券とキャッシュに移動するだろう」と述べ、債券利回りが株価の鍵を握るとの見方を示した。

また、BofA・グローバル・リサーチによると、国際的なファンドマネジャーの株式組み入れ比率は2022年1月以来で最高となっている。市場調査会社トッグルのジュゼッペ・セッテ社長は「誰もがロング(買い持ち)なら、買い手は残っていない」と述べた。

<大統領選は接戦>

米大統領選は、株式市場にとってもう一つの不確定要素だ。

CFRAリサーチの最高投資ストラテジスト、サム・ストボール氏によると、現職大統領が再選を目指す大統領選の年に、メモリアルデー(戦没者追悼記念日、5月最終月曜日)からレーバーデー(9月第1月曜日)にかけてS&P500種は75%の確率で上昇している。しかし今年の選挙戦は極端な接戦だ。

また、バイデン大統領とトランプ前大統領は6月27日に討論会を行うことで合意した。これは過去の大統領選に比べて最も早い時期であり、投資家の注目を集めそうだ。

クリッソールド氏は「かなり伯仲した大統領選になりそうだ。従って、投資家が様子見に入って一種の調整が起こることは十分あり得る」と語った。

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