FRUITS ZIPPER、念願の武道館で広めた“NEW KAWAII”の輪 2万4千人集客の2周年ライブを振り返る

アイドルグループ・FRUITS ZIPPERが結成2周年を記念したライブ『FRUITS ZIPPER 2nd ANNIVERSARY 超めでたいライブ~NEW KAWAII~』を日本武道館にて開催した。2日間の公演はソールドアウト、会場に駆け付けたのべ24,000人と、ライブ配信で見届けた「ふるっぱー(=グループ名の略称やメンバー・ファンの総称として用いられるワード)」とともにメモリアルな空間を分かち合った。本記事では2日目の模様をレポートする。

入場してまず目に入ってきたのは、東西南北4方向に花道が伸びた360°ステージ。ステージ上部に設置されたスクリーンには、「FZ」のロゴをぐるっと囲むように「FRUITS ZIPPER / FROM HARAJUKU TO THE WORLD」の文字。アリーナ席からスタンド席まで超満員、色鮮やかなアイテムを身に纏ったふるっぱーが期待を膨らませながら開演のときを待ち望んでいた。

Overtureが流れると、公式グッズのペンライトに施された無線コントロールシステムが作動。これはペンライトカラーを遠隔で一斉に操作するもので、ソロパートを歌うメンバーカラー1色に会場中を染め上げる。7色のメンバーカラーが順にライトアップされると、ステージ中央の白く光るドーム状のオブジェの中に7人のシルエットが映り、〈(せーの!)らーんらーんらららら♪〉というユニゾンとともに「NEW KAWAII」で開幕。真中まなの「『FRUITS ZIPPER 2nd ANNIVERSARY 超めでたいライブ~NEW KAWAII~』へようこそー!」を皮切りに、7人が思い思いの言葉で出迎えると、ラストの鎮西寿々歌は「ここにいるみんなで今日いちばんのNEW KAWAII思い出を作りますよー!」と高らかに呼びかけた。櫻井優衣と松本かれんの〈アップデートしよ?〉に大歓声で応えると、続く「うぇるかむとぅ~ざ♡ふるっぱー!」ではメンバーがメンバーを紹介しながら武道館のボルテージを上げていく。鎮西のおなじみギャグターンでは「ハンサム=半分さむい」「NEW KAWAII=入荷ワイン」をかけた自虐ネタを堂々と披露。この2年間を共に歩んできた初リリース曲「君の明るい未来を追いかけて」の中盤では、月足天音のソロパート〈書きかけだった僕独りの物語に/続きをくれたのは君だったんだ〉で客席から盛大なコールを飛ばして後押しした。

武道館特別バージョンのティアラで着飾ったメンバーが順に自己紹介を終えると、初披露の「BABY I LOVED」へ。ステージ足元には夜景を連想させるネオンサインが投影され、大人の恋愛模様を綴った楽曲のムードを演出する。仲川瑠夏の力強いボーカルが炸裂した「We are Frontier」ではスモーク噴射、「Re→TRY & FLY」では火炎噴射とステージは次々と熱気を帯びていき、続く「ふれふるサマー!」では4本の花道の先のミニステージが2階スタンド席に届くほどの高さまで上昇。メンバーが代わるがわる客席の至近距離まで近づいていく。北西方向に伸びた花道の先で櫻井が〈あー アイドル全開!〉と歌えば、南西方向の花道から真中が豪快なケチャを飛ばし、タオルをぶんぶん振り回す会場は真夏のサマービーチばりの熱狂ぶりで、こんな夢のような時間がずっと続くことを願うように「ずっと、ずっと、ずっと!」につなぐ。

NEW KAWAIIの精神性にもつながる個性を肯定するナンバー「CO-個性」では櫻井と早瀬ノエルによる〈君のそんなとこ世界一好き〉に「おれもーー!」と応え、「完璧主義で☆」では花道の先のミニステージが再び上昇し、メンバーと客席の距離感を最大限に詰めていく。グループの急成長により新規ふるっぱーのライブ参加も多い中で、こういった演出は推しメンを見つける/推すには持ってこいで、特に今回のような360°ステージでは最適なセッティングと言える。

歓声が鳴りやむと、スクリーンに映像が流れる。各メンバーの結成当初のグループに対する意気込みと、2年経った現在の心境、さらなる未来への決意を語る「NEW KAWAIIを掲げたあの日の私たちへ」というタイトルが付けられたインタビュー映像だ。7色のオリジナルなNEW KAWAIIを再確認したところで、衣装チェンジしたメンバーが再登場し「ぴゅあいんざわーるど」で武道館を揺らしにかかる。鎮西の〈迎えにきたよっ〉でふるっぱーの高揚感をわしづかみにすると、「RADIO GALAXY」「Going!」を立て続けにドロップ。武道館をこれでもかとブチ上げていくと、「ハートのローラーコースター」では日頃活動を後押ししてくれているふるっぱーにそっと寄り添った。

MCで改めて新衣装について触れ、月足の「キラキラしてますかー?」という呼びかけに応える大歓声。初ワンマンライブで初披露された「世界はキミからはじまる」に思いを馳せると、続く「skyfeelan」の落ちサビでは鎮西が〈アイドルやるまで死ねないと思って〉を大事に歌い上げる。「キミコイ」ではこの日のメモリアルなライブにあふれる思いを乗せて、メンバーもファンも「ふるっぱー」として運命的存在であることが実感できた。

ライブ本編終盤、グループの知名度を押し上げた楽曲が続けて披露された。「ハピチョコ」では櫻井が代名詞〈なあになあに?〉をカメラ目線であざとくキメると、「わたしの一番かわいいところ」では中盤のハンドクラップとカラーテープ噴射により祝祭感を演出。客席では待ってましたと言わんばかりにサビの振り付けを真似する者も。続いて、仲川が「FRUITS ZIPPER 2周年、ここにいる会場のみんなの大きな声の『おめでとう』を聞かせてくださーい!」と伝え、「超めでたいソング~こんなに幸せでいいのかな?~」へ。昨年10月の東京体育館公演にて、日本武道館公演がサプライズ発表されたときにも披露された「ちょめでたソング」、曲中では何度も「おめでとー!」のコールが飛び出し、2周年のお祝いをハンドクラップと紙吹雪噴射も交えて存分に分かち合いながら本編が終了した。

アンコールに応える形で再度ステージに上がると、「わたしの一番かわいいところ」が「THE FIRST TAKE」で披露された一幕を完全再現。衣装もそのときのもので、2番サビ前では6人が順番にリレーしラストに本家の櫻井がタメて〈ね!ね!ね!〉を言う神展開に大歓声が沸き起こる。楽曲前後の茶番風のやりとりも微笑ましい。東西南北4方向でそれぞれ記念撮影を済ませると、真中の「みんなでTikTokを撮っちゃいたいと思いまーす!」という呼びかけにより、「NEW KAWAII」の振り付けをレクチャー(1日目は「わたしの一番かわいいところ」)。360°カメラを持ったカメラマンとして登場したKAWAII LAB.総合プロデューサーの木村ミサが「みなさん!FRUITS ZIPPERを武道館まで連れてきてくれて本当にありがとうございます!」と感謝の言葉を伝えて撮影へ。客席はやや難易度の高い振り付けに苦戦しざわざわするも、そんなところもNEW KAWAIIと肯定してしまえる温かい雰囲気はなんともふるっぱーらしい。続いて、鎮西の「2周年という節目にこんなに素晴らしくておっきな日本武道館という場所に連れてきてくれたふるっぱーのみなさん、そしてすべてのみなさんに感謝の気持ちを込めて歌いたいと思います」という言葉とともに披露されたのは新曲「虹」。繰り返し届けられた〈君にとってのパワースポットになるから〉〈アイドル以上のアイドル〉というフレーズには、アイドルとしてまだ見ぬ未来に向かってなおも進み続ける強い意志を感じた。

最後のMCでは、メンバーからふるっぱーに向けて書かれた手紙を1人ずつ読み上げていく。

「私は今、一番好きなことをやってます。好きなことをしているとキラキラ輝けることを知りました。私たちを愛してくれるように、自分のことを愛してください」(鎮西)

「FRUITS ZIPPERは武道館が通過点だと胸を張って言えるグループです。これからもアリーナ、そして東京ドームでライブがしたい!と心から思った2日間でした」(仲川)

「私のアイドル人生に続きをくださって本当にありがとうございます。これから3年目は脱・新人をして、一人前のアーティストとして評価されるグループになれたらいいなって思います」(月足)

「これからはアイドル3年生になるので、これまでみたいに『できないけどがんばる』じゃなくて『かれんたんみたいになりたい』とか『かれんたん見てたら元気になるな』ってみんな思ってもらえるように、もっともっと成長できるようにがんばります」(松本)

「今まで私が助けてきてもらったように、私たちを好きでいてくれている人たちが、私たちを通して、どういう形であっても救われているといいなって思うばかりです」(早瀬)

「私はアイドルは向いてないんだなあって、もうやらないって頑なに言ってました。そんな私が、こんなに幸せな気持ちでアイドルにまた戻ってこれて、武道館まで来ることができたのは、ありのままの私を受け入れてたくさん応援してくれる皆さんのおかげです」(櫻井)

「自分の大好きなものを大好きになってくれるみんながいるって、本当に普通じゃなくて、当たり前じゃなくて。とっても幸せなことだなあって今改めてここに立って感じています」(真中)

花道とペンライトがそれぞれのメンバーカラーで照らされる中、それぞれ武道館のステージに立てた感謝の言葉を思い思いの形で伝えつつ、3年目の決意を新たにこの日2回目の「NEW KAWAII」へ。ラストは武道館公演の模様を収めた『1st LIVE FILM at 日本武道館FRUITS ZIPPER 2nd ANNIVERSARY 超めでたいライブ~NEW KAWAII~』のリリース決定と、12都市13公演に及ぶ秋のホールツアー開催決定のニュースを直接届けると、全員がマイクオフで「ありがとうございましたー!」と感謝を伝え、結成2周年記念ライブは幕を閉じた。

シンプルなワードでありながら、現代の多様性を見事に反映させ新たな価値観を定義する「NEW KAWAII」。FRUITS ZIPPERのコンセプト「原宿から世界へ」を体現し、ふるっぱーとともに世界のポップカルチャーを席巻する日もそう遠くないだろう。

(文=栄谷悠紀)

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