今日は何の日?「ドラゴンクエストの日」!JRPGの偉大なる原点を振り返る

今日は何の日?「ドラゴンクエストの日」!JRPGの偉大なる原点を振り返る

本日(2024年5月27日)は初代『ドラゴンクエスト』の発売日から38周年となる日です。5月27日は日本記念日協会から「ドラゴンクエストの日」の認定を受けており、日本記念日協会のホームページからも参照できます。本記事ではそんな初代『ドラゴンクエスト』について振り返ってみようと思います。

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「少年ジャンプ」とのメディアミックスがFCにRPGを根付かせた

『ドラゴンクエスト』を日本の代表的なコンピューターRPGとして根付かせたきっかけとなったのが、「週刊少年ジャンプ」に不定期掲載されていた「ファミコン神拳」です。このコーナーは「コロコロコミック」のFC特集が人気だから、「ジャンプ」でもそういうのをやりたい……と当時のジャンプ副編集長から相談された鳥嶋和彦氏が、4色刷りカラー・袋とじでメーカーに忖度のない批評や裏技の公開を行う……という条件で、当時鳥嶋氏と既に交友関係があった堀井雄二氏・土居孝幸氏などを巻き込んで開始しました。

このコーナーは瞬く間に大人気となり、「ファミコン神拳」が載った週にはジャンプの部数が増加、そしてジャンプ読者の小学生からの電話の問い合わせも多く、当初鳥嶋氏が自身で電話対応していたがあまりの電話の多さに仕事が回らなくなり、後に「キム皇」として知られる木村初氏に時給2万円で電話対応を依頼した……という逸話が書籍「週刊少年ジャンプ秘録!! ファミコン神拳!!!」(ホーム社)の鳥嶋和彦氏へのインタビューで語られています。

しかし、「ファミリーコンピューターMagazine」など、ゲーム専門雑誌が次々と創刊されてくると状況は一変。多数のライターを擁し、毎週毎週最新情報が提供されるゲーム専門雑誌に対し、少数精鋭で手掛けてきた「ファミコン神拳」は「太平洋戦争におけるアメリカ軍対日本軍のようなもので、このままでは勝ち目はない」と鳥嶋氏は感じたといいます。

そこで、同時期にエニックスでFC初のRPGとして制作に取り掛かっていた『ドラゴンクエスト』に鳥嶋氏は注目。このゲームの紹介を通して、「ゲームがどうやって作られていくのか、ジャンプ読者に見せていこう」という方向性に「ファミコン神拳」はシフトしていきます。『ドラゴンクエスト』のキャラクターデザイン・モンスターデザインに鳥山明氏を採用したのもこの施策の一環です。

一部の『ドラゴンクエスト』制作秘話を語る書籍では鳥山明氏との出会いは偶然的なものとして描かれているものもありますが、実態は「ジャンプ連載作家にゲームの仕事を担当させれば、少年ジャンプにゲームの記事が載る必然性が生まれる」という、鳥嶋氏の計算がなせる業でした。こうして、鳥山明氏のモンスターイラストを大々的に使用した「ドラゴンクエスト」第一報が「ファミコン神拳」に載り、それから少しずつ「ファミコン神拳」は「RPGとはどういうゲームか」「次の新作『ドラゴンクエスト』はどのようなゲームになるのか」という、少年ジャンプ読者にコンピューターRPGを啓蒙する役目を果たしていくこととなりました。

こうして1986年5月27日、『ドラゴンクエスト』は発売されます。「少年ジャンプ」での啓蒙もあり、『ドラゴンクエスト』は大ヒット作品となりました。

FCでRPGを可能にした「復活の呪文」

画像は『ドラゴンクエストXI』公式サイトより

『ドラゴンクエスト』以前は、外部記憶媒体を持たないFCでコンピューターRPGをプレイすることは不可能だと思われていました。『ドラゴンクエスト』のオマージュ元と言われる『ウィザードリィ』、『ウルティマ』、そして『Questron)』にしても、国産PCにおけるRPGの先駆者たちである『ザ・ブラックオニキス』『ハイドライド』『夢幻の心臓』にしても、すべてテープやフロッピーディスクといったセーブデータを記録する外部記憶媒体が必須で、それ抜きでのコンピューターRPGのプレイは考えられないものだったのです。しかし、それを可能にしたのが「復活の呪文」です。

「復活の呪文」の中にはプレイヤーの名前や現在の所持金・アイテムや経験値、一部の攻略フラグといった情報が詰め込まれており、それを文字列として出力してプレイヤーにメモさせ、プレイヤーはその文字列を打ち込むことでゲームを再開させる……というデータの引継ぎプレイが可能になり、FCでもコンピューターRPGが楽しめる土壌が整いました。実際のところ、こういった「パスワード」の仕組みを採用したゲームは『ドラゴンクエスト』が最初という訳ではありませんが、一見意味不明でデタラメな文字列を「復活の呪文」と呼称した堀井雄二氏の言語センス、そして短い文字列に必要なデータを詰め込むための開発スタッフのデータ圧縮の努力は、一つの偉業として称賛されるべきだと筆者は思っています。

なお復活の呪文と言えば大事件が発生した際、たまにそれを皮肉るような復活の呪文(実際にゲームで使える)が出回り、「予言」としてSNSを騒がせることがありますが、書籍「ドラゴンクエスト30thアニバーサリー ドラゴンクエスト名言集 しんでしまうとは なにごとだ!」によればこういった復活の呪文について堀井雄二氏は「さまざまな予言が生まれ、世の中を騒がせることとなりました。」とコメントしており、こうした復活の呪文の使われ方をご存じであることが伺えます。

今から原点たる『ドラゴンクエスト』を遊ぶには?

画像はスマートフォン版『ドラゴンクエスト』公式サイトより

さて、原点たる初代『ドラゴンクエスト』を今遊ぶにはどうしたらいいのか?という問いに答えていきましょう。一番お手軽なのはスマートフォン版で、『ドラゴンクエスト ポータルアプリ』(iOS/Android)のアプリ内購入で遊ぶことができます。

また、PS4/ニンテンドースイッチでも同作が配信されています。コンソールで遊びたい方はこちらもよいでしょう。

原点中の原点たるFC版を遊びたい……という方もおられるかもしれませんが、2024年の基準で見るとFC版ははっきり言って「遊びにくい」RPGに入ります。これは復活の呪文による面倒さのみならず、敵から手に入る経験値やゴールドが非常に少ないにもかかわらず敵との戦闘をほぼ延々と繰り返すゲーム性に起因するもので、安定したクリアのためには地味な経験値稼ぎだけでどんなに早くても7時間程度を要します。この事実はFC版のRTA(リアルタイムアタック)があまり活発ではないこと、そしてこれらのプレイ時間も6~7時間を要していることから察してください。直接のプレイでなくても時代の感覚を掴むにはファミコン版のマニュアルを任天堂の「ニンテンドークラシックミニ ファミリーコンピュータ 週刊少年ジャンプ創刊50周年記念バージョン」のサイトから見てみるのもいいでしょう。

本作のリメイクであるSFC版からは入手経験値や敵の強さ、こちらの呪文威力などが見直されて、今遊んでも充分に楽しめるゲームバランスとなっており、先述のスマートフォン版やコンソール版もSFC版のゲームバランスがベースとなっています。


発表以降中々情報が出てこない状態ではありますが、今後もHDリメイク版『ドラゴンクエストIII』や、完全新作となる『ドラゴンクエストXII』の発売が予定されている『ドラゴンクエスト』シリーズ。これらを楽しみにしつつ、改めて「ドラクエの日」に初代を遊んでみても良いのではないでしょうか。

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