【韓国ドラマ】Netflix『終末のフール』見どころは?「この世の終わり」のリアルさが秀逸、『恋人』アン・ウンジン他、名バイプレイヤーも熱演

Netflix シリーズ『終末のフール』独占配信中

Netflix配信中の新作ディザスタードラマ『週末のフール』。原作は日本の作家・伊坂幸太郎の小説で、小惑星が地球に衝突(朝鮮半島を直撃)するまでの残り200日を生きる人々が描かれた作品だ。

■『終末のフール』見どころは?時代劇『恋人』で飛躍したアン・ウンジン、『ヴィンチェンツォ』『ハピネス』出演バイプレイヤーたちの熱演も

『終末のフール』の主人公セギョン役は、『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』『良くも、悪くも、だって母親』『賢い医師生活』、映画『梟─フクロウ─』のアン・ウンジン。『恋人』は百想芸術大賞TV部門で作品賞、主演ナムグン・ミンが同男性最優秀演技賞、MBC演技大賞8冠を獲得するなど高い評価を受けて、ヒロインを演じたアン・ウンジンにとっても飛躍の作品となった。

ほかのキャストに、『ヴィンチェンツォ』のキム・ユネ。『地獄が呼んでいる』『#生きている』のユ・アイン。『イカゲーム』『海街チャチャチャ』のキム・ヨンオク。『HAPPINESS/ハピネス』のペク・ヒョンジン。『財閥家の末息子』『タクシー運転手 約束は海を越えて』のパク・ヒョックォン。『ヴィンチェンツォ』『宮廷女官チャングムの誓い』『ペパーミント・キャンディー』のキム・ヨジン。『ハピネス』『暗数殺人』のキム・ヨンウンなど。

なかでも、キム・ユネの軍人らしい凛とした身のこなしと、家族を亡くした喪失感で心の安定を欠いているキム・ヨジンの演技は印象に残る。

■来年の春まで食べるキムチを漬けたら何もかもおしまい

ディザスターやゾンビものの見せ場は、たいていパニックのシーンなのだが、じつはそこに至るまでの人々の日常生活に忍び寄る「終末感」の描写が肝で、それが作品に深みを加える。

映画だとそのあたりを凝縮して見せることになるのだが、『週末のフール』は全12話のドラマということもあり、時間をかけて丁寧にリアルに終末感が描かれている。

政治家をはじめとする権力者は我先にと安全な国外に避難。韓国に残された庶民は、「クッカジ ハムケ(最後までいっしょに)」を合言葉に、助け合いながら生きようとする。

軍人たちは食糧確保に奔走する。スーパーの商品棚は空きが目立ち、インスタントラーメンは一種類しか買えなくなる。レジは略奪を防ぐためケージで覆われる。ネットが不安定なので娯楽用の映像はUSBなどのデータで売り買いされる。

巷には流言飛語が飛び交い、シェルター開発者が言葉巧みに庶民たちの財産を吐き出させようとする。夜の街では露骨な性売買が行われる。

聖職者たちは、告解の場で信者たちから「寄付金を返してくれ」と責め立てられる。

筆者がいちばん心打たれた描写は、農園で野菜を育てる中高年の女性たちの言葉だった。彼らは金持ちたちが頑丈なシェルターに2、3年分の食料を備蓄していると聞いて、苦虫を嚙みつぶしたような顔をしながらも、どうせ惑星が落ちたらみんなお陀仏だと吐き捨てる。

「ヨルム(大根の若菜)の季節は終わって、今度は白菜を植えなきゃ。来年の春まで食べるキムチを漬けたら何もかもおしまいさ。もう味噌や醤油を作る必要もない」

「急に実感がわいてきたね」

1970~1980年代は、農家でなくても主婦たちはご近所さんとともにキムチを漬けた。筆者の母親も11月後半から12月、何日もかけてキムチを仕込んでいた。越冬用の大量のキムチを漬け終わると、(当時は素手で唐辛子の薬味をさわったので)「指が痛い」と言いながらも、母の顔は一年でもっとも大事な仕事をやり遂げたという満足感に満ちていた。

このドラマは、パニックの描写ではなく、こうした韓国庶民目線の終末感描写が秀逸だ。

味噌や醤油作りのための甕(全羅南道・康津)
キムチ漬けは今ではゴム手袋をするのがあたりまえだが、かつては素手で行っていた

●配信情報

Netflixシリーズ『終末のフール』独占配信中

[2024年/全12話]監督:キム・ジンミン『人間レッスン』『マイネーム:偽りと復讐』 脚本:チョン・ソンジュ『密会』『風の便りに聞きましたけど!?』

出演:アン・ウンジン、ユ・アイン、チョン・ソンウ、キム・ユネ

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