常人ならチーピン連発!? なぜ松山英樹はトップで止まっても、頭を右に残しても真っすぐ飛ばせるのか【世界基準の飛ばしテク】

トップで一度止まるように見えるのが、松山英樹のスイングの特徴のひとつ(撮影:GettyImages)

瞬く間に速く美しく振り抜いていく、世界のトップ選手たちのスイング。決して真似はできないけど、見ているだけでワクワクしてくる。今回取り上げるのは今年2月の「ジェネシス招待」で米ツアー9勝目を挙げた日本のエース、松山英樹。体幹の強さが生み出す強弾道ドライバーを、奥嶋誠昭氏が解説する。

松山プロは構えたときの胸と手元の距離がずっと変わりません。胸の前にずっと手元がある。この感覚があるのがすごいことで、なかなかできない。胸と手元の関係性が変わらないので、後方から見ると、バックスイングでは少し外側にクラブヘッドが上がっているように見えます。

また、トップで止まってそこからスピードを出すところも特徴的です。これをやろうとすると、ほとんどの人は前傾が起き上がって浮いてしまいます。前傾を押さえ込みながらスピードを出すには、かなりの体幹や背中の筋力が必要ですね。トップで止まること自体は悪い動きではありません。おそらく上半身と下半身をズラさずに同時に動かしていきたいのでしょう。

そして、ダウンスイングからフォローにかけて、頭を右に残しながらターンできているところもすごい。普通の人がこれだけ頭を右に残したら、体の回転が止まって低いチーピンを連発すると思います。外からクラブヘッドが来てフェースもかぶりますからね。

簡単にインサイドから下ろすなら、上体を右に傾ければいい。松山プロが軸を右に倒さずにインサイドから下ろせるのは、ダウンスイングでクラブを倒しているから。目の覚めるような強いフェードが出るか、それとも低いチーピンが出るか、ギリギリのラインです。パワーを逃がさずにインパクトできる体の強さが、このスイングを可能にしています。

■松山英樹
まつやま・ひでき/1992年生まれ、愛媛県出身。2021年の「マスターズ」でアジア人初となる優勝者として歴史に名を刻んだ。今季は「ジェネシス招待」で22年の「ソニー・オープン・イン・ハワイ」以来となる2年ぶり9勝目を挙げ、チェ・キョンジュ(韓国)と並んでいたアジア出身選手の最多勝利数を更新している。

■奥嶋誠昭
おくしま・ともあき/1980年生まれ、神奈川県出身。これまでに稲見萌寧や木下稜介のコーチを務め、2021年の東京五輪では稲見のキャディとしてバッグを担ぎ、銀メダル獲得をサポートした。現在は横浜市にあるスタジオ、『THE REAL SWING GOLF STUDIO』でプロやアマチュアの指導を行っている。

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●東京五輪の金メダリストでもあるザンダー・シャウフェレ(米国)は身長178センチとPGAツアーでは小柄ながらも、5月に優勝した「全米プロ」では平均310.1ヤードを記録している。効率よく飛ばせるスイングのポイントとは? 関連記事の【効率よく打つセンスの塊! 全米プロ覇者・シャウフェレは“不動の上半身”でパワーを逃がさない】をチェックしよう。

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