【今週のサンモニ】中共に空想的平和主義は無力だとおわかりですか?|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。

過激な「外交万能論」を振りかざし

2024年5月26日の『サンデーモーニング』のトップニュースは台湾問題でした。

膳場貴子氏:まずは日本のお隣り、中国と台湾をめぐる問題です。

駒田健吾アナ:台湾の新総裁の就任をうけまして、中国軍が台湾封鎖を想定した軍事演習を5日間にわたり実施しました。日本周辺の高まる緊張に我々はどう向き合えばよいのでしょうか。

空想的平和主義の『サンデーモーニング』は、「憲法九条」「平和主義」「唯一の戦争被爆国」「核廃絶」といった美辞麗句を振りかざし、何の保証もない「外交万能論」を現在に至るまで無責任に叫び続けた上で、日本の安全保障政策および防衛整備にことごとく反対してきました。その過激な言説をほんの一部紹介しますと……

「九条があったから六十年間、戦争しなかったし、他国からの信頼も得られた」
「戦争を止めるのは外交力だ」
「安保法制は権力の暴走だ」
「安倍政権は戦争を正当化しようとしている」
「集団的自衛権によりいつでもどこでも米国と一緒に戦争をできる国にした」
「丸腰でいることの強さを考えるべき。外交の時の日本の最大の武器になるはず」
「反撃能力は外国の施設を攻撃するものだ」
「防衛費倍増は不安に乗じて軍事費を増やすショックドクトリンだ」
「防衛費よりも教育や子育てに使うべき」
「米国の軍産複合体からの武器の爆買いだ」
「武器を持てば、管理しなければいけないし、新しいものが出たら新しくしなければいけない。キリがない」
「世界中が平和だったら軍事費は全部無駄だ」

それが今さら、「日本周辺の高まる緊張に我々はどう向き合えばよいのでしょうか」などと視聴者に問うのは、かなり質が悪い反則です(笑)。

台湾有事という日本の安全保障にとって最も現実的な危機への対応は、『サンデーモーニング』をはじめとする左翼系メディアの大衆操作によって混乱し、十分な備えができていないのが現状かと思います。

駐日中国大使発言は問題視せず

駒田アナ:今回注目されたのは金門島周辺などでの演習。台湾が実効支配していますが、中国本土に最も近い島です。金門島は台湾侵攻の際、真っ先に上陸するのではと警戒されている島。より実戦に近い想定の演習で台湾を威嚇したのでしょうか。その理由は、新たな総統に就任したこの人物の演説です。月曜日、台湾では中国から独立派として警戒される頼清徳氏が新たな総統に就任しました。頼総統は、中国との関係について現状を維持するとしながらも、台湾の主権や国家を強調したのです。これに対して中国は……

中国外務省報道官(VTR):強調するが、台湾独立は死に至る一本道だ

駒田アナ:頼政権が関係を強めようとしているのが日本。

日華議員懇談会・古屋圭司会長(VTR):中国の脅威が増しているのは現実ですから、日台関係はこれまで以上に重要。

駒田アナ:一方、中国の駐日大使は……

中国駐日大使(VTR):日本という国が中国分裂を企てる戦車に縛られてしまえば、日本の民衆が火の中に連れ込まれることになるでしょう。

駒田アナ:中国・台湾との付き合い方が改めて問われています。

本当によくわからないことは、支援者向けの閉じた室内講演会における日本の外務大臣の発言に対しては、言葉狩りを行って無理やり非難した『サンデーモーニング』が、記者会見を開いて堂々と日本の民衆の生命を脅した中国の駐日大使の発言に対しては、全く問題視しないことです。

当然のことながら、中国軍が非戦闘員である日本の民衆を火の中に連れ込んで生存権を侵害すれば、完璧な戦争犯罪です。

このような人権蹂躙の極悪非道な発言を批判することができない『サンデーモーニング』は、もはや報道番組に値しません。

【今週のサンモニ】黒川敦彦氏は『サンデーモーニング』の申し子|藤原かずえ | Hanadaプラス

自分のエラーは「補足」して終わり

膳場貴子氏:この問題、さらに詳しく見ていきましょう。

駒田アナ:今回の軍事演習ですが、今のところ、米国のペロシ下院議長が台湾を訪問した時がありましたよね、あの時、日本のEEZ排他的経済水域内に落下する弾道ミサイルなどの実弾演習は確認されていません。つまり、日本や米国に対しては抑制的だという見方もあります。

このアナウンスを普通に聴けば、ペロシ氏台湾訪問時に日本のEEZに落下する弾道ミサイルはなかったと解釈します。しかしながら、実際にはペロシ氏台湾訪問時に日本のEEZに弾道ミサイルが落下したのは事実です。この後、スタジオトークを挟んで次のようなアナウンスがありました。

膳場貴子氏:駒田さんからさらに補足があります。

駒田アナ:そうですね。言葉足らずだったんですけど、2年前、ペロシ氏が台湾訪問した時には日本のEEZの中で弾道ミサイルの発射があって落下したわけなんですけど、今回はそのような発射はなかったということです。

ヒューマンエラーなら仕方がありません。誰でも犯すものです。ただ、言葉狩りでスケープゴートの人格を攻撃する番組が、自らのヒューマンエラーを「補足」と称して「訂正」するのはどうかと思います(笑)。

「戦争をする国」は日本でなく中国

ここで、スタジオトークの発言を見ていきます。

寺島実郎氏:仮に米軍が動けば、沖縄から動かざるを得ない。台湾有事が日本有事であるという客観的な捉え方は結構なんだけど、日本人として、日本の政治に関わっている人たちとして重要なのは、台湾有事を日本有事にしてはならないということだ。我々はとかく「台湾は親日的で結構だ」と。「中国憎し」の中で、台湾と連携してという空気が動きやすいが、例えば尖閣問題一つとっても、台湾も尖閣の領有権を主張している。様々な議論をしなければいけない点もある。だから、日本として米国と一緒になって戦争をする国になっていいのかということを国民として考えておかなければいけない。

「戦争をする国」は日本でなく中国です。戦争回避のために最大限の外交努力を行うことは大前提として、中国が仕掛けてきたら、日本は米国と一緒に日本を守るしかありません。

また、日本は、「中国憎し」ではなく、覇権国家から住民の人権を守るという人道上および国防上の理由から台湾と連携しているのであって、

サヘル・ローズ氏:日本は不安でもあると思うが、凄く戦争の嫌なところって、別に関わっていない、こちらからしたら遠いこと、あるいは傍観していることが、いつのまにか、安易に黙秘していて加担して行くことだってあり得る。見捨ててはいけないこともあるので、武力で世の中は救えないのは忘れてはならない。

前提から結論が論理的に導かれていませんが、前提は全くその通りです。重要なのは軍事を含めた戦争抑止であり、自由主義国家が連携し、中国の台湾侵攻に利がないことを中共に理解させることです。

中国は完全に台湾を脅している

竹下隆一郎氏:軍事・経済・言葉の3つの力にどう日本が対抗していくのか。特に言葉は日本の政治家1人の発言でガラッと変わることがあるので相当慎重な発言が求められる

軍事・経済・情報(言葉)の3本柱は本当におっしゃる通りです。すなわち、情報戦の対策を行った上で、直接的アプローチである軍事と間接的アプローチである経済によって懲罰的抑止を機能させることです。

なお、日本の政治家として中共の情報戦に与する鳩山由紀夫氏と福島瑞穂氏の発言は許容できません。彼らは中国国内向けに【権威論証 appeal to authority】を展開する上で便利な存在であり、既に【プロパガンダ propaganda】に利用されています。

中国大使主催の座談会で鳩山元首相が日本に懸念表明 「メディアの忖度で中国脅威論浸透」

青木理氏:いくら中国が抑制的とはいえ、まずは挑発なのか恫喝なのか威嚇なのかは別として、軍事行動をすることは論外だということを前提として話さなければければいけないが、ただ一方で有事を前提とするとか、有事を煽って安保のジレンマに落ちていくことは避けなければいけない。

まず、実戦に近い想定の演習を行なっている中国は抑制的ではなく、完全に台湾を脅しています。何よりも、「軍事行動をすることは論外」ということを前提にした議論は不毛ですし、有事を前提としない安全保障対策などありません。

基本的に中共は、兵法を論理的に理解する狡猾なプレイヤーなので、隙があれば「其の疾きこと風の如く」で軍事行動に出る一方、双方の軍備がエスカレーションした結果として戦闘が始まってしまう【安全保障のジレンマ security dilemma】が発生する可能性は低いと言えます。

中共は、高確率で勝ちを確信しない限り「動かざること山の如し」なのです。その意味で、【抑止理論 deterrence theory】を機能させることに効果があるものと考えられます。

いずれにしても、中共に対して、空想的平和主義は、完全に無力であり、強制力を背景としない戦争抑止が機能する可能性は低く、「丸腰」は危険極まりないということです。

「アテンション・エコノミー」のトップランナー青木理

この週の「風をよむ」は「アテンション・エコノミー」でした。

過激な投稿がSNSで利益に アテンション・エコノミー【風をよむ】サンデーモーニング | TBS NEWS DIG

確かに、『サンデーモーニング』が主張するように、SNSでは、インプレッションを得るための過激な投稿が少なくありません。デマを厭わず、論理的な根拠もなく、勇ましい言葉で「すべき」「すべきでない」を唱えるインフルエンサーに信者が集まり、エコーチェンバーを形成するというパターンもよく認められます。

青木理氏:スポーツ紙なんて、この番組もそうだが、こたつ記事で誰それがこう言ったということでアクセスを稼いでいる。

それを言うなら、ヒステリックなコメンテーターがスケープゴートを過激に人格攻撃するといった【イエロー・ジャナリズム yellow journalism】で視聴率を稼いできた『サンデーモーニング』も同様のインプレゾンビです。

さらに、安倍総理に対し、「恐ろしくつまらない男だった」「相当な劣化コピーと評するほかはない」などと過激に罵っていた青木理氏は「アテンション・エコノミー」のトップランナーであったと言えます(笑)。

SNSのインプレゾンビは明らかにテレビの手法をマネしています。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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