『光る君へ』三浦翔平が“全身”で演じきった伊周の負の感情 絶叫に込めた思いを明かす

吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー動画「君かたり」が公開されている。第21回「旅立ち」の放送後には、藤原定子役の高畑充希、藤原伊周役の三浦翔平、そして高階貴子役の板谷由夏が登場した。

第21回で伊周は、自ら任地へ赴いた弟・隆家(竜星涼)とは違い、任地へ赴くことを拒む。出家したと偽るも実資(秋山竜次)に見抜かれ、それでもなお拒み続ける伊周に、定子は「見苦しゅうございますよ、兄上」「このうえは帝の命に速やかにお従いくださいませ」と言った。頼みの綱であった定子から見放されたと思ったのだろうか、伊周は人目もはばからず、その場に寝転ぶと「嫌だ、嫌だ、嫌だ!」と子どもが駄々をこねるように泣き喚く。

三浦はインタビューにて、はいつくばって泣き叫ぶ場面での感情を「後悔だったり、焦りだったり、混乱だったり、恐怖だったり、怒りだったり、っていういろんな負の感情」と説明している。自分が置かれた状況をどうしても受け止められない伊周の心情を、三浦は文字通り全身を使って演じ切った。嫌がる伊周のあまりの熱量、大人げない振る舞いには驚かされるが、その悲痛な声色につい同情してしまう。また三浦は、ともに大宰府へ行くという母・貴子の存在によって伊周の心に少しだけ安らぎができた、とも話していた。「母上」と泣きつく三浦の演技からは確かに伊周の心の安らぎが感じられ、子どもが甘えるような表情に映った。

母の愛情に救われたのも束の間、一条天皇(塩野瑛久)は伊周が母とともに赴くのを許さなかった。2人が引き離される場面では、貴子を演じる板谷も、伊周を演じる三浦も、理不尽な別れに直面したそれぞれの胸中を全身全霊で表した。インタビューにて板谷は「まさか、あそこで引き離されるとは思わなかったので悲しかったですね」とコメントし、無慈悲な状況を振り返ると「悲しいっていうか、なんか……『何なのこれー!!!』って感じでした」と笑っていた。そんな板谷が感じた母親の絶望は、道長(柄本佑)に懇願する場面や引き離されながらも伊周の名を呼び続ける姿に強く表れている。

なお、三浦と板谷はそれぞれ、「そなたに多くを背負わせてしまった」という貴子の台詞についてコメントを残した。板谷は「結構自分勝手なセリフだなって」「私は同じ母親としては、急に貴子さんが弱くなっちゃったというか『もっとしっかりしてよ貴子さん』ってこのシーンに関しては思いました」と語った。一連の出来事ですっかり弱り切ってしまったのは伊周だけでなかったのだと改めて感じる。一方、三浦は、「(伊周は)聞いているようで聞いていないというか、耳にちゃんと入ってきていない状況ですかね」「今、起こっている状況自体を伊周自身が理解をできていなくて、ほぼ放心状態に近い」と答えている。実際、網代車で母の横に座る伊周は憔悴しきっており、貴子の言葉に反応しているようでしていない絶妙な表情を浮かべていた。

「ここのこの一連の話、全部そうなんですけど、伊周の脳みそがまだ追いついていないんですよ」と語った三浦は、そのために伊周は今の状況に対してとにかく必死なのだと口にする。目に涙を浮かべながら「右大臣殿、頼む……」と必死に懇願したり、引き剥がされながらも「母上、母上!」と叫び続けたりする姿からは、三浦が語った必死さがありありと感じられた。喚き散らす声色からは、かつての気品ある佇まいを思い出すことができない。しかし皮肉にも、三浦の台詞の言い回しが悲痛に響けば響くほど、人間らしい伊周の魅力が強く感じられた。

(文=片山香帆)

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