新小結大の里“来場所で大関昇進”は十分に可能 目安の「三役で3場所33勝」すでに形骸化

大の里(C)共同通信社

担当記者らが「来場所は大関昇進に向けての……」と聞けば、高田川審判部長(元関脇安芸乃島)は「それはまだわかりませんが」と慎重に答える。それでも報道陣は「雰囲気やムードが盛り上がってくれば……」と食い下がり、高田川部長は再度、「それはわかりません」と言うしかなかった。

大の里(23)の記録的優勝劇の舞台裏で繰り広げられていた、記者と審判部の攻防である。

26日の5月場所千秋楽は、3敗で単独トップの大の里が阿炎に勝利。負ければ4敗力士たちとの優勝決定戦となったが、本割で決着をつけた。

入門から7場所目での優勝は、幕下付け出しの最速記録。元横綱輪島の15場所を大きく塗り替える快挙である。

優勝インタビューでは「きのう、親方(元横綱稀勢の里、二所ノ関親方)からは『優勝しても喜ぶな』と言われたので、冷静に冷静にと意識していました」と話したものの、自身初賜杯に感極まったのか、懸賞金の束を受け取る時は今にも泣きそうな表情。控えの座布団に座っている間は何度も目元に手をやった。

そんな中、インタビュアーが「新三役で2ケタという大関昇進の起点ができたが」と質問。大の里は「これから、しっかり親方の言うことを守って、上へ上へと精進して頑張りたいと思います」と答えたが、来場所の成績次第で大関昇進の可能性は十分あるという。

大関昇進の目安は「三役で3場所33勝以上」。大の里は新小結だった今場所がその起点ということになるが、何事にも例外はある。

直近では元大関の栃ノ心がそうだ。前頭3枚目だった2018年1月場所で14勝1敗、初優勝を果たすと、直後の2場所は関脇で10勝、13勝。平幕上位での優勝が評価された形となった。横綱照ノ富士も2015年、最初に大関昇進した時は平幕が起点だった。しかも、前頭2枚目とはいえ、8勝止まり。大関とりの起点に入るはずがないものの、そこから新関脇で13勝、12勝で初優勝。実質、三役2場所で昇進したようなものだ。

つまり、「三役で3場所33勝」という目安はあってなきがごとし。その後、高田川審判部長が「三役で2ケタ勝たないと。その前はカウントされない」と否定的な見解を示したが、冒頭で担当記者らが「雰囲気やムード」と食い下がったのも、“特例”での昇進を後押しする空気が協会内にあるからだ。(つづく)

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