ジャッキー・チェン、生誕70周年&新作『ライド・オン』で新境地も開拓【この夏、ハリウッドを照らすスター】

様々なハリウッドスターの台頭が目覚ましい今夏。今回は、多くの映画ファンを魅了する、若手からベテランまでの8人のスターを最新作とともにご紹介します! 今回は、生誕70周年を迎え、新作『ライド・オン』では新境地も開拓したジャッキー・チェンについて。(文・米崎明宏/デジタル編集・スクリーン編集部)

ジャッキー・チェン プロフィール

1954年4月7日、香港生まれ。子供時代に京劇やアクションを学び映画界に。スタントマンや脇役を経て、主演作が製作されるようになり、『ドランクモンキー/酔拳』(1978)などで人気者に。

『ヤングマスター/師弟出馬』(1980)『プロジェクトA』(1983)『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)など監督兼主演作がいずれも大ヒット。その後『ラッシュ・アワー』(1998)などでハリウッドでも大成功。世界的なアクション・スターとなる。2016年にアカデミー賞特別賞受賞。

いろんな映画に出演して世界中の人々に会うことができて今の僕がある

2024年で初主演映画の公開から半世紀という息の長い映画人生を送って来たジャッキー・チェン。本人曰く「実は僕がのこの世界に入ってから数えると62年目なんだ」と“七小福”と言われた子役時代、若きスタントマン時代も含めて、役者生活を振り返る。そして4月に70歳を迎え、ますます意気軒高なジャッキーが『ライド・オン』公開にあわせ、インタビューに応えてくれた。

「今回の映画はまず主人公の愛馬チートゥを演じた馬と親しくなることが大切だった。現場ではずっと彼のそばにいて、ご飯を食べさせてあげたり、信頼関係を築いたんだ。例えばカチンコの音や、『アクション!』の掛け声にも驚かないようにしておかないと、事故が起きてしまうからね。録音マイクも僕が近づけて、慣れさせたりしたんだよ。

自分自身の役作りは、もともとスタントマンだったから、ラッキーなことにアクションはすでに元ができている状態でしょう。僕はやはり演技がしたいんだ。“アクションもできる役者”になりたいね。そのために自分をいろいろ変えなくてはならないと思った」

一俳優として、映画に対する情熱を語るジャッキーはいつも饒舌だ。そしてこれまでの第一線での活躍を振り返ってもらうと、

「いろんな映画に出演することで世界中の様々な人に会うことができ、人生のこと、世の中のことを勉強させてもらった。映画のおかげで人を助けることやチャリティーの大切さを知った。ファンの皆さんを通じて世界各地の文化を学んだ。これらは役を演じる上ですべて生かされてきた。ありがたいことだよね。

若いころはずっとアクションをやり続けたいと思っていたけど、だんだん『死ぬまでずっとアクションはできない』と思うようになってから、変わらざるを得ないなという気持ちになってきた。でも今も子供のように落ち着かない性格で、運動も好きだし、いつも『なにか新しいアイデアはないか』と考えるので、そのことが自分自身をいつまでも若々しくしていられる秘訣だと思っている」

と答えてくれた。製作中の「ベスト・キッド」シリーズの新作も楽しみだ。

ジャッキー・チェン出演『ライド・オン』

記念の年を迎えたジャッキー・チェンの集大成的なアクション

初主演作公開から50周年、そして自身の生誕70周年を記念して、アクション映画界のレジェンド、ジャッキー・チェンの映画人生集大成として日本公開される記念作。ジャッキーがここで扮するのは彼の長いキャリアでも初めて演じるベテラン・スタントマンのルオ。お得意のアクションを展開しつつ、愛馬と共にスタントをこなす姿に笑いと涙が交差する人情味あふれる物語になっている。

共演は『ワン・セカンド永遠の24フレーム』(2020)のリウ・ハオツン、『モフれる愛』(2019)のグオ・チーリンら新世代俳優から、『ベスト・キッド』(1984)のユー・ロングァン、『香港国際警察/NEW POLICE STORY』(2004)のアンディ・オンといった、かつてジャッキー映画に出演したアクション・スターまでがジャッキーを囲んで好演。

監督、脚本はラリー・ヤン。また映画本編には『プロジェクトA』(1983)『ポリス・ストーリー/香港国際警察』(1985)など過去のジャッキー映画の名シーンが意外な形で登場するのもお楽しみだ。

あらすじ

香港映画界で伝説のスタントマンと呼ばれたルオ(ジャッキー)だが、ケガのため第一線を退き、今は借金に追われながら中国の撮影所に住み込み、生まれた時に引き取った愛馬のチートゥとエキストラなどの仕事をこなして地道に暮らしていた。

ところがチートゥの元の持ち主の債務トラブルが発覚、チートゥが借金のカタに連れ去られそうになる。大事なチートゥを守るため、ルオは疎遠になっていた一人娘で法学部の学生であるシャオバオ(リウ)を頼ることを決意する。

仕事に入れ込むあまり今は亡き母と離婚した父を許していないシャオバオは、仕方なく彼女の婚約者で新米弁護士のナイホァ(グオ)を紹介し、調停裁判に持ち込む。だがこれを機に切れかけていた父娘の絆が復活の兆しを見せるようになっていく。

一方でルオはチートゥと昔ながらの危険なスタントの仕事を続け、裁判の行方もあまり芳しくない。果たしてチートゥの運命は? そしてルオ親子の仲は修復できるのか?

一頭の馬をめぐって奔走する人々

ルオ(ジャッキー・チェン)

かつてはレジェンド的存在だったが、今は愛馬チートゥと地道に生活している老スタントマン。幼いころから疎遠だった娘シャオバオと寄りを戻したいと願っている。

シャオバオ(リウ・ハオツン)

法学部に通う弁護士志願の学生で、ルオの一人娘。仕事優先で今は亡き母と離婚した父を許せないでいるが、不器用に生きるルオに対して次第に心を開いていく……。

ナイホァ(グオ・チーリン)

シャオバオの婚約者で新米弁護士。心優しいが体力はあまりない? 愛するシャオバオに頼まれて仕方なくチートゥの所有権の持ち主を探し始めるが……。

ホー総裁(ユー・ロングァン)

各地から名馬を集めている人物で、映画撮影をしていたルオとチートゥを見かけたことから、チートゥに興味を持つ。馬に対する確かな愛情を持っている。

注目ポイント1:ジャッキーを囲むキャスト

特別出演のスタンリー・トン(中央)とウー・ジン(右)

本作には、ジャッキー映画ファンや中国・香港映画ファンにおなじみの顔が特別出演。ユー・ロングァン、アンディ・オンの他にも、ルオとチートゥが出演する映画の撮影現場にいる監督役は、『ポリス・ストーリー3』(1992)などジャッキー作品をいくつも手掛けてきたスタンリー・トン監督が扮している。

また同じシーンでルオを監督に紹介する売れっ子俳優の役は『MEG ザ・モンスター2』(2023)などの中国スター、ウー・ジン。他にも「イップ・マン」シリーズのシー・シンユーらも登場するのでチェックしたい。

注目ポイント2:ルオの相棒・チートゥを演じた馬

特に訓練を受けていなかった元競走馬がチートゥに

スタントもこなし賢いチートゥを演じたのは、訓練されたスタントホースではなく、特別に訓練されたマカオの引退した競走馬が扮している。競走馬は人間に保護された生活を送ってきた馬と異なる性質を持っていて、それがチートゥに相応しいと思われたのだ。

安心感を与えるためにジャッキーはいつも撮影前にこの馬に話しかけて落ち着かせるように務めていたという。また爆発などの危険なシーンでは、訓練を受けたスタントホースが使われ、俳優と動物の安全に万全を期していたという。

『ライド・オン』
2024年5月31日(金)公開
中国/2023/2時間6分/配給:ツイン
監督:ラリー・ヤン
出演:ジャッキー・チェン、リウ・ハオツン、グオ・チーリン、ウー・ジン

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