『鬼滅の刃』宇髄稽古を受けた炭治郎に感じる成長 隊士との交流を描いた“狙い”とは?

ついに、炭治郎の柱稽古が始まった。TVアニメ『鬼滅の刃』柱稽古編第3話「炭治郎全快‼ 柱稽古大参加」は、ほぼ全てがアニオリで構成されており、原作ファン、特に宇髄ファンにとっては嬉しい回となった。

炭治郎、そして鬼殺隊の面々が最初に挑んだのは元柱である宇髄の稽古。言わずもがな、宇髄は元・音柱のひとりで、「遊郭編」では炭治郎たちとともに、上弦の陸の堕姫と対峙し勝利した実力者である。柱から退いても陽気な振る舞いと実力は健在で、体育会系のごとく鬼殺隊をビシバシ鍛え上げていく。「遊郭編」以降、本格的な登場は「柱稽古編」が初めてとなるが、鬼特訓についてくることができない隊士に対して「だらしねぇ」と言い放つシーンや「飯残したヤツ、稽古の量増やしとくからな」と圧をかけるシーンは、あまりにも過酷で隊士が可哀想になってしまうが、実は誰よりも仲間思いなのが宇髄でもある。訓練に勤しむ隊士を見つめる宇髄の表情はどこか子を見つめる親のような温かいものを感じた。声優・小西克幸のアメとムチの使い分けには惚れ惚れする。

そんな宇髄の稽古を唯一苦しい顔せずにこなしていたのが炭治郎。元から体力には自信があった炭治郎だが、悠々と宇髄の要求に応えていく姿は、「無限列車編」「遊郭編」「刀鍛冶の里編」での経験を経て、確実に力をつけているのがわかる回でもあった。特に宇髄と互角に剣を交えるシーンは炭治郎がすでに柱クラスの実力を持っていることを示唆していた。

原作では鬼殺隊の隊士との会話は省かれているが、アニメでは丁寧に描かれていたのが印象的だった。上弦を倒した炭治郎に隊士のひとりが「やっぱり上弦って強いんだろ?」と尋ねるが、あまりにも炭治郎が過激な内容を楽観的に話すものだから、「俺たちには理解できない世界ってあるんだな」と納得する場面や、宇髄と剣を交えた鬼殺隊が「だから俺達もいつかは少しでもその(柱や炭治郎の)支えになれるように頑張ります」と決意を表明する場面をあえて描くことで、モブ扱いされがちな隊士たちのアウトラインを浮き彫りにする。

「柱稽古編」はコミックスでは単行本の第15巻から第16巻に収録されているエピソードとなっているため、アニメ版の大半がアニオリになることは、放送前からわかっていた。とはいえ、第3話で描かれたのは原作の見開き1ページほどの、第1話と第2話に比べると進行具合はかなりスローダウン。しかし、炭治郎の成長と鬼殺隊の面々との対話シーンを濃密に描くことで、この先の伏線を張ることに成功していた。原作ファンであれば、きっと隊士との絡みがどういう意味を持っているのか、想像がつくはずだ。

第1話の冒頭で蛇柱・伊黒と風柱・実弥が鬼が潜伏する城へと潜入するシーンが描かれていたが、ここで再び2人の会話がインサートされていた。伊黒の「この静けさは……嵐の前触れなのではないかと」という言葉からはもうすぐ嵐という名の無惨とのラストバトルが近づいていることを予感させる。これまでは「無限列車編」では炎柱・煉獄、「遊郭編」では音柱・宇髄「刀鍛冶の里編」では恋柱・甘露寺、霞柱・無一郎が活躍してきたが、「柱稽古編」では蛇柱と風柱の2人がメインで描かれるパートと言えそうだ。

次回は無一郎が炭治郎に稽古をつける。原作では実に9コマの短い尺をどんなアニオリ描写で見せてくれるのか。
(文=川崎龍也)

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