福原遥はひたむきなヒロインがよく似合う 日テレ初主演作では“正統派”と対極の存在に?

7月期の日本テレビ系土ドラ10『マル秘の密子さん』で福原遥が主演を務めることが発表された。楽しみなのは、その意外性のあるキャラクター設定だ。本作で福原が演じるのは謎に包まれたトータルコーディネーター・本宮密子。依頼人のどんなオーダーも叶えるという彼女は、コーディネートでビジュアルを、コーチングでメンタルを変えたり、裏工作でスキャンダルをもみ消したり……依頼者を成功に導くためにはどんな手も使う謎多き女性とのこと。これまで福原が演じてきた役柄とは大きく異なる表情が観られそうだ。

福原といえば、存在感のみならず声質における抜群の透明感も相まって、ここのところ夢に向かって真っ直ぐ突き進むヒロイン役が続いていたように思える。朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)のヒロイン・舞は、紆余曲折を経ながら航空学校を卒業するが、その後様々な家庭の事情もあり家業を手伝い、最終的には起業する。自ら設定した夢を叶える馬力がありながらも、その時々で自分に課される試練を静かに受け入れ、「置かれた場所で咲く」こともできるひたむきでしなやかなヒロイン像を好演した。

深田恭子とW主演を務めた『18/40~ふたりなら夢も恋も~』(TBS系)でも、キュレーターになるという夢に向かって一歩進み始めた矢先、予期せぬ妊娠が発覚する大学生・有栖役を熱演。有栖の方が責任感の強さゆえ、一人背負い込もうとするあまり視野が狭くなってしまってハラハラするような場面も少なくなかった。そのアンバランスさがまさに子どもと大人の狭間にある有栖をリアルに投影していた。いずれにせよ、何かしらの障壁や遠回りや寄り道がありながらも、最終的には卑屈にはならず周りに心を開いて、自分自身を開花させていく主人公が福原にはよく似合う。

福原が生徒役で出演した『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』(日本テレビ系)の公式サイトのインタビューで、当時から変わらぬその真髄が表れている。

「自分に“キャッチフレーズ”をつけるなら?」という質問に対して、「“踏まれても立ち上がる雑草”、理由はちょっとやそっとのことではへこたれないから」と答えている。(※)まさに彼女自身が根っからの体当たりヒロインなのだろう。

それに対して映画『あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。』では、シングルマザーで女手一つで自分を育ててくれている母親を気遣い、大学進学を諦めている“無気力”な高校生・百合役を担った。“人のため”に自身を犠牲にすることで近しい人を守れなかった父親の姿も重なり、特攻隊員たちに複雑な感情を抱くも、彼女の素朴な疑問が周囲の救いになるところもあるような、ここでもある意味真っ向勝負な役回りを務めた。反発することで自身の考えや信念が浮き彫りになる、“硬さの中に柔らかさ”のあるキャラクターを体現していた。

そんな福原の全く異なる一面を引き出したのが『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(日本テレビ系)での恋愛体質で予測不能な不思議ちゃん・沙織役だろう。しかし彼女も彼女である意味、彼氏に自身の全てを集中投下する過剰な真っ直ぐさ、重さがあり、また別のベクトルでひたむきには違いなかった。

新ドラマでは福原は狙いの見えない掴みどころのなさそうな曲者・密子をどう演じてのけるのか。「天使か? 悪魔か?」という、大きな振り幅や矛盾をはらむ正統派ヒロインとは対局の存在を、どうキャッチーに演じるのか。打算的で計算高いところもあるようなキャラクターを演じる福原を観られるのが楽しみだ。

■参照
※ https://www.ntv.co.jp/3A10/articles/1305d1syae1ddsogsoe.html
(文=佳香(かこ))

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