わずか45分で圧巻4発! 昌平2年生MF長璃喜の先発へのこだわり。玉田圭司監督も期待「形をうまく作れば誰も止められない」

センセーショナルな活躍をした昨冬の高校サッカー選手権から約半年。「与えられた場所で結果を残すしかない」。努力を重ねてきた昌平のMF長璃喜(2年)が衝撃のゴールラッシュを決めた。

5月26日に行なわれたU-18高円宮杯プレミアリーグEAST第8節。全国の舞台で何度もやり合ってきた市立船橋との対戦で、スコアレスで終えた前半は相手のハイプレスに手を焼いてボールを前に運べなかった。

だが、後半に攻撃陣が爆発する。51分にMF三浦悠代(3年)が先制点を奪って均衡を破ると、ここからは昌平の独壇場となった。

主役の座を担ったのが、長だ。52分にピッチに送り込まれると、左サイドハーフのポジションで圧倒的なパフォーマンスを披露する。左SB上原悠都(3年)のサポートを受けながら、得意のドリブルで相手を翻弄。機敏な動きで相手DFを何度も外して、いとも簡単にエリア内に進入していく。

1点を追加して迎えた71分には、主将MF大谷湊斗(3年)のラストパスを受けると、一気にスピードを上げてゴールへ向かう。最後は冷静に左足で流し込んでネットを揺らした。

その3分後には高い位置でボールを自ら奪って、単騎で勝負を仕掛ける。追いすがる相手を振り切り、右足で決めてリードを広げた。

こうなると、長の勢いは止まらない。

「自分の得意としている部分は自分自身でも分かっているだろうし、チームとしても理解している。そういう形がうまく作れた。そうなれば誰も止められないですよね」とは、柏や名古屋で活躍したストライカー玉田圭司監督の言葉。

長はさらにギアを上げると、78分にはFW鄭志錫(3年)のお膳立てからゴールを奪い、ハットトリックを達成。終了間際には最も自信がある左サイドからのカットインで中に入り、右足でニアサイドを撃ち抜いて4点目をもぎ取った。

チームも最後まで無失点で終え、中断前最後のゲームを6-0で快勝。「1試合4ゴールは中学時代も含めて初めて」と、長も笑みを浮かべる。

出場時間はアディショナルタイムを入れて45分。この時間で4発を叩き込んだように、途中からピッチに立つような選手ではない。言うまでもなく実力的にはスタートから起用できる力があり、むしろ今季は大谷や世代別代表歴を持つ山口豪太(2年)らとともに、主軸として活躍が期待されている選手だ。

実際に、昨年度の選手権では1年生ながら攻撃の切り札として重宝され、全て途中出場ながら4試合で3ゴール。得意のドリブル突破からチームを救うゴールを何度も決め、その活躍は多くの人の目に止まった。

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しかし、今季の役割は昨年と同じく“スーパーサブ”。「戦術的な部分もあるし、今の昌平は長のような選手が後ろにいるのは心強い」と指揮官が評したように、左サイドで得意のカットインを武器に流れを変えるタスクを担う。

選手としてスタートからピッチに立てない悔しさはもちろんある。「シーズンの最初の頃は悔しかった。やっぱりスタートから出たかったし、でもなかなか出られなくて。前節も初めてスタメンで出たけど、思うような結果を残せなかった」。

今季初スタメンとなった前節の鹿島アントラーズ戦(0-1)は、相手の牙城を崩せずに不発。その結果、市立船橋戦はベンチスタートになった。それでも、長は成長するために腐らずに取り組んで最高のパフォーマンスを見せた。

では、レギュラーとしてピッチに立つために何が必要なのか――。長は言う。

「守備面や全体を通してのポジショニングは課題。試合の出場時間が長くないので試合勘もあまり良くないけど、改善するためにフィジカルの強化やステップワークに取り組んでいる」

攻撃面では特長を発揮できる一方で、守備は不得意。プレスをかけるタイミングやパスコースの切り方などは改善の余地を残す。逆に言えば、そうした課題を克服できれば、攻守でチームに貢献できる選手になるし、もう1つ上のステージも見えてくる。

プロも注目するアタッカーは壁を乗り越え、これから始まるインターハイ予選で真価を示せるか。新たな自分に出会うべく、玉田監督のもとで貪欲にチャレンジを続けていく。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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