27日午前5時ごろ、富山県砺波市狐島(きつねじま)の住民から「田んぼの中に黒い動物がいる」と110番があった。市職員や砺波署員らがパトロールしたところ、ツキノワグマ1頭を見つけ、通報から11時間35分後の夕方、市鳥獣被害対策実施隊員が駆除した。現場は散居村で、クマは住宅敷地内の屋敷林の木に登って身を潜めていた。けが人はなかった。
砺波市によると、クマは体長110センチ、体重50キロの雄で、3~4歳の成獣とみられる。
午前8時半ごろから狐島地内の寺などを移動し、屋敷林のある住宅の敷地に入り込んだ。その後、屋敷林に登り、高さ8~10メートルの枝に座ったり横たわったりした。
隊員らはモデルガンで威嚇し、クマが木から下りてきたところ、警察官職務執行法に基づいて発砲。北西に約150メートル離れた住宅の敷地に逃げ込んだが、午後4時35分ごろに再び発砲して駆除した。
近隣の市砺波北部小学校は、全校児童439人を午後3時に集団下校させた。現場の若林地区に住む児童27人については保護者に送迎を依頼した。
住民「怖い」「驚いた」
のどかな散居村がクマの恐怖に包まれた。砺波市狐島で80年以上暮らす住民によると、地区にクマが出没するのは初めて。地元住民からは「怖い」「驚いた」など不安の声が聞かれた。
クマがとどまった屋敷林の家人の男性は、近くの道路に避難。「大きいクマだった。怖かった」と振り返った。
現場近くの中辻進さん(90)は「クマは山に出るものだと思っていた」と驚いた様子。市若林地区自治振興会前会長の岡龍夫さん(83)は「クマはこの地区では縁がないと思っていた。どこから来たか想像つかない」と語った。
県自然博物園ねいの里・野生鳥獣共生管理員の赤座久明さん(70)は、2022年6月に近くの鷹栖地区でクマによる人身被害が発生したことを挙げ「餌を求めて偶発的にやってくることがある。クマが隠れられないように屋敷林を整備するなどの対策が必要だ」と指摘した。
平野部に出没、注意呼びかけ
5月は冬眠明けのクマが行動範囲を広げ、平野部にも出没する可能性があることから、県内の専門家らは注意を呼びかける。
クマの生態に詳しい立山カルデラ砂防博物館の白石俊明主任学芸員(48)は、6~7月の繁殖期・分散期を前に、クマの活動範囲が広がっているとして「生ごみや納屋の中の漬物だるなどはクマの誘引物となるので、気をつけて管理してほしい」と話す。
県自然保護課によると、今年1月以降の県内の出没件数は計46件で、昨年同期より8件多い。担当者は「クマを見つけたら自分の安全を確保した上で、すぐに警察などに連絡してほしい」としている。