【安田記念】8番人気ダノンキングリーがグランアレグリアを破った2021年 春のマイル王決定戦の「記録」を振り返る

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外国馬に最も多く騎乗したのは武豊騎手

今週は安田記念が開催される。今年はなんと言ってもロマンチックウォリアー、ヴォイッジバブルと2頭の外国馬が参戦する点に注目が集まる。

1986年以降で見ると、安田記念に参戦した外国馬は56頭。着度数は【3-3-3-47】という戦績で、最も多い着順は12着。ザイーテン、ハートレイク、オリエンタルエクス、レッドペッパー、エイブルワン、コンテントメントの6頭が海外遠征の壁に阻まれ12着となった。そのうちハートレイクは1995年の覇者だった。

ハートレイクが安田記念を制した時の鞍上は武豊騎手だった。日本人における外国馬の騎乗回数は武豊騎手がトップで5回。蛯名正義騎手が2回騎乗しているほかは横山典弘騎手、岡部幸雄騎手が1度あるのみと、珍しいケースとなっている。武豊騎手は1993~1997年まで連続して外国馬に騎乗している。ハートレイクで勝利をあげたほかはスキーパラダイス、アマジックマンで掲示板に入った。

また、外国に所属する騎手で最も安田記念に挑戦したのは、B.プレブル騎手で騎乗回数6回。2006年にブリッシュラックで勝利するなど、存在感を見せた。2011年にコンビを組んだサムザップは父がシンコウキング(1997年高松宮杯を勝った日本馬)ということで記憶しているファンもいるかもしれない。

8番人気、単勝47.6倍で勝利をあげた伏兵ダノンキングリー

外国馬で印象的な馬の1頭が、香港馬フェアリーキングプローンだ。2006年に遠征すると、10番人気、単勝39.9倍を跳ね除け勝利。2着も6番人気の外国馬ディクタットで、馬連は147倍の万馬券になった。

1986年以降の優勝馬の単勝オッズを見ると、フェアリーキングプローンの単勝39.9倍は2位。5位は3歳で勝利を挙げたリアルインパクトの29.3倍、4位は親子制覇を果たしたニホンピロウイナー産駒ヤマニンゼファーの35.2倍、3位は感動の復活勝利となったロゴタイプの36.9倍だ。

そして最も人気薄で制したのが、2021年のダノンキングリー。単勝オッズは47.6倍だった。ダノンキングリーは2018年にデビューするとそこから3連勝。皐月賞3着、ダービー2着と世代トップクラスの実力を示し、秋には毎日王冠でアエロリット、インディチャンプら実力派の古馬も撃破した。しかし4歳初戦の中山記念で勝利して以降は勝ち星から遠ざかり、同年は安田記念7着、天皇賞(秋)12着と低迷。

その天皇賞(秋)以来の実戦となった2021年の安田記念では女王グランアレグリアをはじめインディチャンプ、サリオス、シュネルマイスターと各世代のマイル強者が集結したこともあり、8番人気47.6倍という伏兵扱いだった。しかしレースがはじまると鞍上の川田将雅騎手と堂々たる競馬を披露。直線では外を回りながら早めに抜け出し、グランアレグリアの猛追を凌ぎ切った。5歳となった伝説的なマイル女王に、3歳NHKマイルC以来となるマイル戦での黒星をつけたのであった。

そのグランアレグリアは単勝1.5倍の圧倒的人気だったが、1988年にはニッポーテイオーが同じく単勝1.5倍で勝利をあげている。これは1986年以降では3位の記録。2位は1990年オグリキャップの単勝1.4倍、1位は1998年タイキシャトルの1.3倍である。以降、グラスワンダー、アーモンドアイが同じく単勝1.3倍に支持されたもののいずれも結果は2着。タイキシャトルの凄まじさが改めて浮き彫りになるのではないだろうか。今年は圧倒的な人気馬はいないと思われるが、外国馬参戦によりどのようなレース展開になるのかにも注目だ。果たして、ダノンキングリーの記録を更新するような逆転劇はあるのだろうか──。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。



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