新渡戸の書「心清者福也」 副理事長、願い込め寄贈 少友幼稚園 茨城・水戸

新渡戸稲造揮毫の書を寄贈した少友幼稚園の竹脇元治副理事長(右)と吉野悦子園長=水戸市備前町

茨城県水戸市備前町の少友幼稚園(吉野悦子園長)に、新渡戸稲造揮毫(きごう)の書が寄贈された。「心清者福也」と記された書は「こころきよきものはさいわいなり」と読み、文語訳聖書マタイ伝第5章8節「幸福(さいわい)なるかな、心の清き者、その人は神を見ん」から取った。流麗な筆遣いで表現された作品は、園児が集うホールに飾られている。

寄贈したのは同園の竹脇元治副理事長。書は1929年4月7日、同園が現在建つ場所にあった水戸基督(キリスト)友会会堂で開かれた基督友会日本年会に出席し、講演を行うために訪れた新渡戸が、竹脇副理事長の父で同会会員の猪野保さんの要請により揮毫したもの。ほかの会員らの求めにも応じ、新渡戸は和歌を書き与えた。

父から引き継いだ竹脇副理事長が自宅で長く保管。「『目の前で書いてくれた。とてもうれしかった』と聞いたことがある」と10歳ごろに聞いたエピソードを挙げた。資料がある部屋に置いてあり「誰も見ることがないので、いろいろな人に接するほうが良い」と4月に寄贈した。

新渡戸を研究している同園の大津光男理事長は「揮毫は和歌が多く、聖書の言葉を書いたのは2作品しかなく貴重。書だけでなく、どういう働きをし、考え方を持った人なのかを知ってもらえれば」と期待を寄せた。吉野園長は飾った直後の園児の反応を振り返り「これ何と興味を持っていた。(掲示した写真に写る)おじさんが書いた作品と説明した」と話した。

竹脇副理事長は「心の清き者は幸いだ、という気持ちが流れていたから、この幼稚園が存続していると思っている。この書が幼稚園の歴史の中でなじんでいってほしい」と語った。

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