多様性尊重のまちづくりとたばこ税(上)令和6年度予算 東京23区のたばこ税収は809億円

東京23区ののたばこ税収予算額(C)日刊ゲンダイ

令和6年度の東京23区の予算書をベースに特別区たばこ税予算額と、一般会計歳出における喫煙所整備関連の予算計上の状況を調べてみた。

各区のたばこ税収予算額は一覧表のとおり。最多は新宿区の62億9029万円で、最少は文京区の10億9907万円だった。

常住人口に加え、昼間人口の多さや繁華街の有無などでたばこ税収は変わってくる。文京区よりも人口が2万人少ない台東区が、たばこ税収は約30億円と文京区の約3倍もあるのは、上野や浅草といった繁華街を抱え、昼間人口が多いからだろう。

■もっとも多いのは新宿区の63億円、宰相は文京区の11億円

さて、たばこ税の存在感はどれぐらいあるのか。新宿区のケースで見てみよう。令和6年度一般会計における歳入合計は約1845億円。このうち特別区税は約563億円。特別区税に占めるたばこ税(約63億円)の割合は11.2%。ちなみに軽自動車税は1億1090万円しかない。いかにたばこ販売が区の財政に貢献しているか、一目瞭然である。

問題はこうしたたばこ税がいったい、何に使われているかということ。もちろん、目的税ではないので一般会計として処理され、23区のたばこ税収800億円超がどこに流れているかは不明である。

ただし、最近は予算書を検証すると「喫煙所設置対策」「路上喫煙対策の推進」「環境美化対策」といった施策で、喫煙所の整備予算が組まれているのをチェックできる。ただし、「環境美化」という大枠には喫煙所整備関連以外のごみ対策を含むケースもあるため、厳密に予算額を特定できないケースがあり、厳密な23区比較ができないのが現状だ。

そうしたなかで、喫煙所整備などで多額の予算を計上していたのが港区だ。たばこ税収52億円の港区の喫煙所整備関連予算額は、「みなとタバコルール推進など」で7億1291万円も計上されている。税収比でいうと約14%である。千代田区も充実している。たばこ税収38億円に対し、「喫煙所設置対策」として4億8211万円が計上されている。こちらもたばこ税収比12.5%と高水準だ。

残念ながら税収比が10%を超える区はほとんどない。税収が最多の新宿区でさえ「路上喫煙対策の推進など」で2億3249万円。税収比は3.7%に過ぎない。大半の区が3~5%程度の水準だ。

SDGsが叫ばれるなか、どの自治体も多様性を尊重したまちづくりを目指している。そうであれば、せめてたばこ税収の10%ぐらいは分煙環境整備に充ててほしいものである。 (つづく)

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