各地で進むオーバーツーリズム対策 京都では私道に「進入禁止」の看板を新たに設置へ、罰金も

京都・祇園の「花見小路」周辺には、私道での写真撮影禁止などを呼びかける看板がところどころに立っている(2024年5月9日/京都市東山区/弁護士ドットコム撮影)

新型コロナウイルスが感染症法の5類に移行され、さらに円安の影響もあり、観光地はにぎわいを取り戻しつつある。

一方、地域住民の生活に配慮しない旅行客のマナーの悪さが目立つようになり、対策に動かざるを得ない状況も生まれている。

日本有数の観光地・京都では、観光客によるトラブルに長年悩まされてきた住民らが次なる一手を打った。

私道を往来する違反者に罰金を求める看板を明日5月29日、設置することにしたのだ。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●山梨県ではコンビニ前に黒幕を設置

旅行客のマナー違反をめぐっては、最近、富士山をめぐる対応がニュースとして大きく取り上げられたばかり。

報道によると、山梨県の富士河口湖町では、コンビニの建物に富士山が乗っかっているように見える風景を目当てにした人が押し寄せ、道路を横切るなどの迷惑行為が多発。この対策として車道と歩道の間に黒い幕を張ることになった。

●京都では観光地内の私道でトラブル

場所は変わって京都市東山区の観光地「花見小路」。風情のある街並みや舞妓さんが生活する建物が並び、国内外から訪れる人でごった返す。

この花見小路を中心にして枝分かれするように私道が走っている場所があり、これまでは地域住民らの「厚意」で通り抜けが黙認されてきた。

しかし、新型コロナの感染拡大が落ち着き始めた2023年5月以降、こうした私道にも観光客が入り込んでくるようになり、住民から苦情が寄せられるようになった。

地域住民らでつくる「祇園町南側地区協議会」によると、特にひどかったのが「小袖小路」と呼ばれる細い私道が通るエリア。

●2016年から注意喚起の看板を設置

団体ツアー客の通行が増え、近くに住む人たちから「舞妓さんが家から仕事に出られない」「騒音がうるさい」などの声が多く上がり始めたという。

同協議会はこれまでも、無断の写真撮影などのトラブルに悩まされており、2016年に初めて私道での写真撮影禁止を呼びかける看板を設置した。

以降、「家の玄関まで入らないで」「横広がりで歩かないで」「監視カメラ作動中」などと注意喚起する看板を増やしてきた。

●新たに「進入禁止」の看板 「本当は立てたくない」

今回、新たに「通り抜け禁止」を求める看板を作成。まずは小袖小路の出入り口の2カ所に立てることにした(5月29日設置予定)。

看板には日本語と英語、中国語で「許可なく進入の場合、罰金1万円」と書かれており、法的な効力はないものの抑止力につながることを期待しているという。

祇園町南側地区協議会の幹事、太田磯一さん(61)は「これだけ京都らしい街並みがまとまってある場所はここしかないので、当然、見たい、体験したいという気持ちはわかります。協議会としても本当は看板なんか立てたくないんですが、住んでいる方への迷惑を考えて観光してほしい」と話している。

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