野菜の味がしないのになぜ? 塩味を「サラダ味」と呼ぶようになった理由とは

サラダ味やしょうゆ味などがあるせんべい(写真はイメージ)【写真:写真AC】

せんべいやスナック菓子にある「サラダ味」。生野菜の味はしないのに、なぜサラダ味というのかご存じですか。また、同じく「サラダ」がつく「サラダ油」はいったい、なんの油なのでしょう? あまりにも身近で意識することはないかもしれませんが、よく考えてみると不思議ですよね。サラダ味とサラダ油について、栄養士で元家庭科教諭の和漢歩実さんに伺いました。

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サラダ味とは何味? 名の由来とは

サラダ味のせんべいやスナック菓子が好きな人は多いでしょう。近年は野菜を使ったお菓子もありますが、サラダ味とつくものは野菜の味ではなく塩味がします。塩味なのにサラダ味とするのは、「サラダ油」を使っていることに由来があるといわれています。

サラダ味は、1960年代に亀田製菓から発売された米菓が先駆け。しょうゆ味が主流だった当時、高価だったサラダ油を使って塩をまぶしたあられを、あえて塩味とせず、サラダ油を前面に出してサラダ味と名づけたことが始まりといわれています。日本独自の米菓に洋風さを組み合わせたことが斬新で、一躍人気に。以降、米菓でのサラダ味は定番になりました。

したがって、一般的な米菓のサラダ味は生野菜とは関係なく、サラダ油を使って塩で味つけをしたもの。油を使うことで米菓から塩が落ちにくく、味が均一になるメリットもあるそうです。

となると、今度はサラダ油とは何か、気になるところでしょう。

サラダ油はなんの油? 名の由来とは

植物油には、たとえばゴマから搾られたゴマ油、オリーブの実が原料のオリーブオイル、なたねやエゴマ、アマニなど原材料名がつくものが多いです。しかし、サラダ油はサラダから作られている油ではありません。

サラダ油とは、なたね油、大豆油、コーン油、ヒマワリ油、米油などを組み合わせて作られた植物油の総称です。そもそも、日本でサラダ油が登場したのは1920年代。日清オイリオが、低温でも固まらないように精製した調合油を販売したのが始まりといわれています。

当時、日本では揚げ物などに食用油を使うのが主流でしたが、西洋のサラダ料理にかけるドレッシングの材料として生でも使える食用油という意味から、サラダ油の名がつけられたそうです。

のちに、日本農林規格(JAS規格)の基準を定める際に、広く知られたサラダ油の名称がそのまま採用されました。生で使えるのはもちろん、揚げ物や炒め物など加熱料理にも使えるオールマイティな油です。コレステロールを下げる働きが期待されるオメガ6系脂肪酸のリノール酸や、不飽和脂肪酸のオレイン酸を多く含んでいます。

以上のような背景により、米菓のサラダ味、そしてサラダ油が誕生して現在に至っています。うるち米やもち米を原料とする米菓は日本独特の焼き菓子。小麦粉で作った菓子よりも消化が良く、油の吸収率が少ないといわれています。とはいえ、油や塩を使っているので、食べすぎると脂質や塩分の過剰摂取につながります。サラダ味は軽やかな食感でおいしく、つい何枚も食べたくなるかもしれませんが、気分転換の間食に適量を食べましょう。

和漢 歩実(わかん・ゆみ)
栄養士、家庭科教諭、栄養薬膳士。公立高校の教諭として27年間、教壇に立つ。現在はフリーの立場で講師として食品学などを教える。現代栄養と古来の薬膳の知恵を取り入れた健やかな食生活を提唱。食を通して笑顔になる人を増やす活動に力を注いでいる。

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