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現在中国は、一人っ子政策の弊害による「“超高速”少子高齢化」をはじめ、不動産バブルの崩壊など、さまざまな困難に見舞われています。中国マネーが流れてくる<富裕層の移住先>として人気のアジア小国もまた、大きな転換期を迎えています。本記事では<株式会社T&T FPコンサルティング>の髙島一夫氏・髙島宏修氏、<株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所>の西村善朗氏・森田貴子氏らによる共著『富裕層なら知っておきたいスイス・プライベートバンクを活用した資産保全』(総合法令出版)から一部抜粋し、アジア経済の概況を解説します。
世界三大投資家ジム・ロジャーズ氏もシンガポールへ移住
シンガポールは1965年にマレーシアから分離して以来、初代首相であるリー・クアンユーとその与党である人民行動党のリーダーシップの下で、事実上の独裁体制が続いています。「統制国家」と言ってもよいほど、システムはしっかりと整い、瞬く間に世界の金融センターの地位を得ることができました。
国土が狭い(東京23区とほぼ同じ)シンガポールでは、中心部に住居を構えられるのは一部のエリートだけです。彼らは格安で住居を購入することができますが、外国人は数億円を出さなくては住居を購入することができません。そのため、隣国マレーシアに住みながらシンガポールに資産を置くという外国人富裕層も増えています。シンガポールはそれほどに人気のオフショア地域なのです。
これまで、世界中から著名な富裕層がシンガポールに拠点を移しており、ウォーレン・バフェット氏、ジョージ・ソロス氏とともに世界三大投資家のひとりと呼ばれるジム・ロジャーズ氏もアメリカを離れ、家族でシンガポールに移住しています。
シンガポールは外国人移民の抑止へ舵切り
ただ、かつては日本人にとって絶好のオフショアセンターであったシンガポールにも、徐々に歪が生まれつつあります。建国の父・リー・クアンユーは2015年3月に91歳で亡くなり、彼の同志の多くも鬼籍に入っています。2004年以降は、彼の息子であるリー・シェンロンが首相の座に就いていますが、2024年に後任に首相の座を譲る発言をしています。
これまで、リー・クアンユー体制による強力なリーダーシップの下で経済発展を続けてきたシンガポールですが、建国から60年近くが経とうとしている今後は、政治的な混乱が起きることも予想されます。コロナ禍で行われた2020年の総選挙では、与党の支持率が過去最低となり、国民が外国人受け入れを促進してきた政策にノーを突き付けたことも、ひとつの転換点です。
移民は紛れもなくシンガポールの経済成長の原動力になっていたのですが、国土が狭いことから、住宅や雇用などの奪い合いとなり、移民への反発心が高まってきたものと考えられます。
こうした背景から、シンガポールは外国人の流入を抑止する方向に舵を切りました。したがって、今後は経済発展のスピードが落ち、日本のような急速な少子高齢化が進行することさえ考えられます。
一人っ子政策の弊害により急速に少子高齢化が進んだ中国
ここに追い打ちをかけるのが、香港と同様、チャイナリスクです。
中国人の資金は香港からシンガポールに流れており、影響度は徐々に増しています。このことは、現時点では大きな問題ではないかもしれません。むしろ、中国の経済成長による恩恵がシンガポールにもたらされるでしょう。しかし、これは中国の経済成長が続く限り、という条件付きです。
現在の中国は、一人っ子政策の弊害により急速に少子高齢化が進んでいるほか、ゼロコロナ政策の失敗や不動産バブルの崩壊、さらにはアメリカとの関係悪化など、中国共産党一党独裁体制による統治に問題が生じています。
中国の大手グローバルIT企業が「諸刃の剣」になる可能性も
産業においては、ファーウェイやアリババ、テンセントといった大手IT企業がグローバルに成長をつづけていますが、これも皮肉なことに中国の首を絞めることになるかもしれません。
なぜなら、中国は約14億人もの人口を抱えているからです。IT化が進めば、人間の労働力がいらなくなるため、中国の多くの若者が職を得られなくなる可能性が高まります。IT産業に関わる一部の個人が富を蓄積し、その他大勢が貧困にあえぐことになれば、社会不安は高まり、中国の経済成長を押しとどめてしまうかもしれません。
こうした変化は、目に見える形ですぐに起きるものではありませんが、気がついたときには手遅れになっている可能性も考えられます。
髙島一夫
株式会社T&T FPコンサルティング
代表取締役社長CFP
髙島宏修
株式会社T&T FPコンサルティング
取締役CFP
西村善朗
株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所
代表取締役税理士
森田貴子
株式会社ユナイテッド・パートナーズ会計事務所
パートナー税理士