プラスイオンとマイナスイオンの濃度が「マリオカート」のタイムとeスポーツ選手の心理、身体に影響か 九産大・萩原准教授

プラスイオンとマイナスイオンがeスポーツ選手に心理的・生物的な影響を与える可能性を示唆する論文を九州産業大学の萩原悟一准教授、同大の秋山大輔准教授、シャープの船守宏和氏、松本勝氏、高見星司氏、岡野宏昭氏らの研究チームが発表した。実験ではレースゲームのパフォーマンスでも有意差が確認された。この研究に関する論文はデジタル領域を中心に学術論文を広く掲載する電子ジャーナル「Journal of Digital Life」(ジャーナル・オブ・デジタル・ライフ)で公開されている。

日本eスポーツ連合(JeSU)は、2022年までに125億円を超えた国内のeスポーツ市場規模が2025年には217億円に達すると推計している。先月、東京・有明で行われた対戦格闘ゲームの大会「EVO Japan 2024」には3日間で延べ9000人がエントリーしたという。

eスポーツの熱気が高まるなか、萩原准教授らの研究チームは同論文で、eスポーツ選手のトレーニング方法と環境に関する研究の必要性を指摘。2021年に行った先行研究に続いて、プラスイオンとマイナスイオンを浴びたときとそうでないときで心理、身体、ゲームのパフォーマンスにどのような違いがあるかを調べた。

実験ではeスポーツ選手の男子大学生10人が、ニンテンドースイッチ用のカーレースゲーム「マリオカート8デラックス」(任天堂)をプレイ。練習でコースを3周したときのタイムと、本番でシャープの「プラズマクラスター」製品からプラスイオンとマイナスイオンを含んだ風を頭部に受けながら3周した時のタイムを3回比較した。ただし10人中5人はただの風を受けていた。また、被験者の半数が浴びたプラスイオンとマイナスイオンの濃度は、先行研究の1平方センチメートルあたり最大16万4千個よりも濃い1平方センチメートルあたり約25万個だった。

同時に実験の前後で心理状態を調べるアンケート式の検査「二次元気分尺度(TDMS)」と、脳波計による脳波の測定を実施して、心理的・主観的なデータと身体的・客観的なデータがどのように変化したかを比較した。実験は4週間の間隔を空けて2回行われた。

研究チームはこれらの結果をまとめて、プラスイオンとマイナスイオンの風を浴びると、ただの風を受けたときよりも心理的な覚醒レベルと身体的な覚醒レベルが高い数値を示すことを発見した。タイムについても同じ傾向で、イオンを浴びた場合は練習より平均4.9秒速くなり、浴びない場合は平均3.1秒速くなっていた。萩原准教授によると「すべての被験者が本番と練習でほとんどミスなくコースを走行しました。(イオンを浴びていない被験者は)少しのコーナリングのずれ等で生じるコンマ数秒が重なってトータルで1秒弱、遅くなってしまったという感じです」と話した。

これらの結果を受けて研究チームは、プラスイオンとマイナスイオンのある環境でeスポーツ選手の心理的・身体的な覚醒レベルが高まることが実証されたと結論づけた。また、今回の実験と先行研究の結果をもとにイオン濃度が濃いほど効果が高くなる可能性を示唆した。

一方で、プラスイオンとマイナスイオンを浴びたことで「脳機能の何が変化したか」を詳しく検証する必要があるとして、さらなる実験が求められるとした。例えば、イオン環境下での脳血流の変化をさらに研究すれば、パフォーマンス向上の理由が分かるかもしれないという。

同論文は「Journal of Digital Life」のスポーツと身体活動におけるデジタル技術の活用をテーマとした特集号「Digital Technology in Sports and Physical Activity」で公開されている。

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