『碁盤斬り』草彅剛インタビュー/贅沢な時を経る

『孤狼の血』の白石和彌監督が初めて手掛ける時代劇の主演は、『ミッドナイトスワン』で第44回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した草彅剛。二人のコラボレーションが見事に開花した『碁盤斬り』は、古典落語をベースにした“リベンジ・エンタテイメント”。囲碁の達人で、武士の誇りを賭けて復讐に燃える主人公を演じた草彅剛のインタビューには、ユーモアたっぷりだが、謙虚な人柄が滲み出ている。(文・清水久美子/写真・野口貴司/デジタル編集・スクリーン編集部)

草彅剛 プロフィール

1974年7月9日生まれ、埼玉県出身。1991年にCDデビュー。主な出演映画に『黄泉がえり』(2003)、『日本沈没』(2006)、『あなたへ』(2012)、『まく子』(2019)、『ミッドナイトスワン』(2020)、『サバカン SABAKAN』(2022)などがある。

──白石監督の作品に出演するのは、今回が初めてですよね。

そうです。(香取)慎吾ちゃんが出演した白石監督の『凪待ち』は、とても素晴らしい作品だったので、今回ご一緒できるのが嬉しかったです。

──白石監督にとって時代劇は初めてだったそうですが、大河ドラマ「青天を衝け」では徳川慶喜を演じるなど、時代劇の経験も豊富な草彅さんから何か提案したことなどはありましたか?

特に提案したことはないんですが、白石監督の初めての時代劇に出ることができて感激しました。監督ならではのこだわりが満載で、新しい挑戦もたくさん盛り込まれた作品です。

──撮影中、印象的だったことは?

白石監督は、映画に対してというか、撮影に対して経験が豊富な方だなという印象を受けました。脚本とはちょっと違う化学反応が役者同士に起きたりすることがあって、そういう場合は現場でより良い方向に変えたりしたのは素晴らしいなと思いました。監督がいつもニコニコしていて、すごく穏やかな現場で楽しかったです。

──今回、草彅さんが演じたのは、囲碁の達人で浪人の柳田格之進ですが、どのように役作りされましたか?

原作となっている落語の寄席の映像をYouTubeで見たら内容が分かりやすく、脚本を読んだら格之進という人物像がスッと入ってきたんです。現場に入ったらワクワクして、撮影に臨んだんですが、囲碁については特に勉強とかはせず、現場で打ち方を習いました。

──映画を観たら囲碁の達人に見えました! やっぱり草彅さんは天才ですよね。

達人に見えるように、先生においしいところだけ教えてもらいたいって、ちょっと不謹慎な生徒で(笑)。集中力はせいぜい6分です。撮影を終えたら早く帰りたいから、短期集中型なんですよ。

──集中力と切り替えが物凄いですよね。

(愛犬の)クルミちゃんたちに早く会いたいから、基本的に早く終わりたいのよ~。こんなこと言うと、またスタッフに怒られちゃうな。

──では最後に、ちょっと大きな質問ですが、草彅さんにとって映画とはどのような存在でしょうか?

そうですね……難しい質問だなぁ。出られたらラッキーな存在かな。映画は準備にも撮影にも時間がかかるし、編集して公開まで1年くらいかかることもあります。映画には、監督たちの丁寧なこだわりが詰まっているから、贅沢で特別なものだと思います。なので、今後もたくさんのオファーをお待ちしています!

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『碁盤斬り』2024年5月17日(金)公開

浪人・柳田格之進は身に覚えのない罪をきせられた上に妻も喪い、故郷の彦根藩を追われ、娘のお絹と二人で江戸の貧乏長屋で暮らしている。かねてから嗜む囲碁にも、その実直な人柄が表れ、嘘偽りない勝負を心掛けている格之進。

ある日、旧知の藩士により、悲劇の冤罪事件の真相を知らされた格之進とお絹は、復讐を決意する。お絹は仇討ち決行のために、自らが犠牲になる道を選ぶのだが……。

柳田格之進(草彅剛)

誇りを大切に、実直に生きてきた彦根藩の武士。因縁のある武士に汚い手を使われ、濡れ衣を着せられて彦根藩を追われ浪人となり、江戸で娘のお絹と貧乏暮らしを強いられている。囲碁の達人で、萬屋の亭主・萬屋源兵衛と対局して親しくなる。一旦決めたら何があっても一歩も引かず、復讐を遂げるために命を懸ける。

『碁盤斬り』
2024年5月17日(金)公開
日本/2024/2時間9分/配給:キノフィルムズ
監督:白石和彌
脚本:加藤正人
出演:草彅剛、清原果耶、中川大志、奥野瑛太、音尾琢真、市村正親、斎藤工、小泉今日子、國村隼

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