『正直にお伝えします!?』のジャンルを超えた面白さ コ・ギョンピョ&カン・ハンナがキス

「正直に生きられて僕は幸せだ」

「正直であること」「ありのままであること」の大切さを描くNetflix配信中の『正直にお伝えします!?』。本作は、建前と本音を使い分けてきた人気アナウンサーが、突然ウソをつけなくなったことから起きるドタバタラブコメディだ。主演は、『恋のスケッチ~応答せよ1988~』『シカゴ・タイプライター ~時を越えてきみを想う~』のコ・ギョンピョと、『九尾の狐とキケンな同居』『最愛の敵~王たる宿命~』のカン・ハンナが務める。本稿では第7話、第8話を中心にご紹介したい。(以下、ネタバレあり)

コ・ギョンピョ演じる、JBC放送局の人気アナウンサーであるソン・キベクは、カン・ハンナ演じる同じ局の放送作家オン・ウジュから、依頼を受けてバラエティ番組に出演する。

キベクは、番組の収録中にウジュに電気室に呼び出されて、振る舞いについての注意を受けた。その刹那にくしゃみをしたキベクは、濡れた手で電線を触ってしまい、感電して気絶をする。目覚めたキベクは、ウソがつけない体質へと変化していたのだった。

キベクと人気スターのキム・チョンウン(チュ・ジョンヒョク)が参加する恋愛リアリティーショー『カップルパラダイス』で、キベクとチョンウンの初恋の人チョイ(ハン・ドンヒ)は、キベクとカップルになりそうだった女性メンバーのユヨン(キム・ジイン)を脅して番組から追い出す。

ユヨンが抜けた穴をどうするかと話すスタッフに、チョンウンは、「僕の初恋の人に挑み、三角関係を作る女性が必要なんだろ?」「確実に僕の心に火をつける人がいる」と元カノのウジュを出演させることにする。ウジュが番組に出演者として参加したことで、キベクとチョンウンは互いをライバル視してウジュの気を引こうとする。

一方のウジュは、慣れない番組出演に戸惑い、わざとらしい演技で出演者とスタッフをしらけさせる。キベクは、チョイがユヨンを脅す現場を偶然目にし、チョイをデートに誘って、彼女にウジュが番組を成功させようと奮闘しているのを邪魔しないようにと警告する。そんなキベクの姿を見たチョイは、キベクの想い人がウジュであることに気づくのだった。キベクとチョンウンの学生時代の初恋の人であるチョイが、清純な初恋相手かと思いきや、なかなかの悪女ぶりを発揮し始めた。

番組内のゲームで、キベクはウジュとの出会いを「あの日に人生が変わったのかも」と告げる。キベクの告白を聞いてときめくウジュと、焦るチョンウン。チョンウンは、元カノであるウジュとなぜ別れたのかと質問され、8年前のふたりの記念日に起きた出来事を思い出す。チョンウンは、自分の母親に「テレビ局に勤める教師一家の娘」だとウソをついていたのだった。それを知ったウジュは、チョンウンが自分のことを恥だと思ったと怒り、「私を哀れんでいた」と傷つき、ふたりは別れたのだった。チョンウンは、当時のことを「あまりにもバカなことをしたんだ。もう恥ずかしくて仕方なかったよ」と明かす。これまでチョンウンが、一方的にウジュに未練タラタラだった理由はこれだったのだ。結婚を考え親にも話していた女性を、自分のついたウソで傷つけてしまい、自分から去られてしまったことはチョンウンの中でもさぞ心残りだったのだろう。

恋リア番組内では、最終決断となり、それぞれが好きな相手に告白する場面が訪れた。キベクのウジュへの気持ちを知るチョイは、ウジュや番組スタッフのために自分を選ぶようにキベクに強く要求する。

番組収録から1カ月が経過し、キベクとウジュは再会する。ウジュはキベクに「あなたに翻弄されたわ。最初は変人だと思った、それから気になり始めて、最後は寂しくなった」と本音を伝える。すると、キベクも「僕も寂しかった。会いたかったんだ」と告げる。キベクから最終決断の時のことを聞かれたウジュは、キベクにキスをする。驚いたキベクは、ウジュに熱いキスを返す。そしてふたりは、互いの気持ちを確かめ合い熱いキスを交わした。ヒロインからの軽いキスのあと、主人公が熱いキスを返すという“韓ドラあるある”のシチュエーションに観ているこちらもテンションが上がる。

不器用だけれど誠実なキベクの想いが伝わって、ウジュとキベクが両想いとなり、ハッピーな展開だが、まだ終わるには早い流れ。何かふたりの間に絆を深める出来事が起きてもおかしくない。

キベクは、急遽ピンチヒッターでグルメレポーターの仕事をすることになる。そこでキベクは正直なレポートをし、監督から気に入られてレギュラーの話が舞い込んでくる。さらに、チョンウンの芸能事務所であるForever C&Cの本部理事であるミーラ(キム・ヨンジュ)から、フリーアナウンサーとして「私と組めばどんな番組にも出られる」と誘いを受ける。キベクが、恋リアの出演者やグルメレポーターとして、正直に「ありのまま」の自分の姿を見せたことで、キベクの人生に新たな波がやってきたのだ! これは嬉しい展開だ。

キベクとウジュがふたりの仲を深めてゆく中で、ウジュの元カレのチョンウンの行動がふたりの仲に波乱を巻き起こしそうな展開を見せた。チョンウンは、ウジュの母ボクジャ(ペク・ジュヒ)の元を訪れ、「ウソをつくことでウジュを守ったつもりでした」「でもウジュが望んでいたのは、ありのままを受け入れることだった」と過去の過ちを詫びて、涙を流すのだった。

本作は、“ウソ”を主軸に登場人物たちそれぞれが、「ありのままで生きること」、自他の「ありのままを受け入れること」で成長をしていく物語だ。ともすれば弱さや弱みであるものを、われわれは他者や自分の目からも欺き、隠してしまう。だが、それはかえって自分と他者のどちらも生きづらくしてしまうのではないだろうか。自分の弱さを受け入れたとき、他者の弱さもまた受け入れることができていく。そして心の器が大きくなっていく。キベクとウジュだけでない、チョンウンもチョイも、それぞれが抱える弱みや歪さがある。それぞれの登場人物たちが、自他のありのままを受け入れていくプロセスは、ヒューマンドラマの要素もあり、韓国ドラマらしい魅力がある。ジャンル分けのできないほっこりゆるいヒューマンラブコメを最後まで楽しみたい。
(文=にこ)

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