『Destiny』最終章の“残された謎”を考察 放火事件&20年前の汚職事件を巡る真相は?

いよいよ最終章に突入した石原さとみ主演、亀梨和也共演の連続ドラマ『Destiny』(テレビ朝日系)。放火事件と20年前の汚職事件について残る謎など終盤に向けての展開を考察してみたい。

まず、野木真樹(亀梨和也)の父で弁護士の浩一郎(仲村トオル)の住む野木家に放火したのは誰なのか。

第5話で野木家が火事となり、浩一郎が意識不明の重体に。その日実家を訪れていた真樹が犯行を自白したことで、放火事件の被疑者になった。20年前に東京地検特捜部の検事だった奏(石原さとみ)の父・辻英介(佐々木蔵之介)が担当し、自死に追い詰められた「環境エネルギー汚職事件」の真実が録音されたボイスレコーダーを、奏から聞かされていた真樹。彼は、被疑者の弁護士だった浩一郎に真実を聞き出すため実家を訪れていた。

しかし第7話で、火災時に野木邸付近で配達をしていたクリーニング店のドライブレコーダーから、奏と真樹の同級生である梅田祐希(矢本悠馬)が逃げ去る姿が発見される。奏が梅田家を訪ねて真相を確かめると、祐希は逃げ出したときに真樹と鉢合わせし、「違うんだよ、真樹、俺」と何かを説明しようとする祐希を真樹が逃がし、罪を被ったことを明かす。真樹が「ここで何してるの?」と聞かなかったのは、祐希が浩一郎を訪れたのを知っていた、もしくは放火に至るトラブルに巻き込まれたのを見ていたからだと考えられる。友情に熱い真樹は、子供がいる祐希の代わりに、余命の短い自分が全ての罪を被ろうと思ったのだろうか。

祐希がなぜ浩一郎を訪ねたのか。以前、弁護士会のセミナーで祐希は浩一郎に声をかけられ、真樹が帰ってきた理由や、英介のことを何か言っていなかったかと聞かれていた。祐希はとぼけていたが、浩一郎から「失礼ですが、梅田先生は最近色々と苦労なさってると聞いています。私で良ければ力になりますが」と声をかけられ、法律事務所の口利きをしてもらうなど、放火をする理由はないはず。野木家には、真樹やカオリ(田中みな実)に関する情報を届けに行ったか、斡旋してくれたことへのお礼、もしくは抱えているトラブルを相談しに行ったと予想される。ただ、浩一郎に成りすました人物に呼び出され、放火犯に仕立て上げられた。もしくは既にいた先客と揉めていたので逃げてきたなども考えられる。しかし、祐希の抱える“苦労”とは何なのか。

強いて言えば、20年前の事件を掘り返したのは、祐希の妻・知美(宮澤エマ)が記事を発見しカオリに伝えたからで、カオリの死は自分のせいだと悔やんでいるだけに、裏で真相追求に動いていてもおかしくなく、知美絡みで野木家に行った(呼ばれた)のなら犯行に繋がる可能性もある。

そこで鍵となるのが、12年前にカオリが浩一郎と話した内容だ。20年前の事件は、東正太郎議員(馬場徹)が、重機メーカー山上重工業から2000万円の資金提供を受けた疑惑が浮上。東議員の秘書・加藤正孝(岩田和浩)が経産省の妻鹿謙一(代情明彦)に送ったメールの画像が見つかり、英介は身元不明のメールで起訴するのは勇み足と慎重だったが、上司に意見を聞いてもらえず贈収賄で起訴することに。しかし、加藤がメールを送った時刻には青葉大附属病院の人間ドックで胃カメラ検査を受けていて、このメールを秘書が送るには無理があることから、この証拠は捏造とされ、マスコミに叩かれ、検察組織は英介を見捨てた。英介はこれは最初から仕組まれたもので、ハメられたと考えている。証拠のメールは捏造なのか、または青葉大附属病院の人間ドックの記録が改竄されたものなのか。カオリは親が病院を経営する名家の娘なだけに、その伝手を利用し、人間ドックの記録こそが捏造された真実と辿りつき、浩一郎に問い詰めた。この真実は知美もカオリから聞かされているはず。

視聴者の多くは、謎の議員秘書(川島潤哉)の仕業だと考えているだろう。この秘書は浩一郎を呼び出し、奏に会ったかを聞き出したことのある間柄で、奏が英介の部下の元検事・新里龍一(杉本哲太)に会うのを尾行していたり、極め付けは、奏の右腕となっている事務官の加地(曽田陵介)に潜入スパイをさせ、奏や真樹の行動をマークしている。普通に考えれば、環エネ事件の隠蔽のために今も暗躍している。ただ、浩一郎にトドメを刺していないことから放火は警告の意味が強い。もしかしたら浩一郎は真樹を守ろうと議員秘書と口論となり、何らかの形で眠らされ火をつけられた。その一部始終を身を持って知った真樹は、奏の身を案じ、全ての罪を被り真実を黙秘している可能性もある。

そしてもう1人の放火犯の候補が、奏の婚約者で横浜みなと総合病院の医師・貴志(安藤政信)だ。前回、奏と真樹の度重なる密会についに堪忍袋の尾が切れ、「しばらく家を出ます。別れよう」と置き手紙を残した。今のところ婚約者が元彼と密会するのを黙認している善人でしかないが、ひねくれた見方をすると、奏との出会いは、真樹が失踪し、ロースクールの受験にも落ちて弱っているところに忍び寄ったとも言える。しかも偶然に違う場所で3回も。もしこれが運命ではなく、病院関係で死んだカオリと知り合いだったり、実はカオリと兄妹など因縁の関係で、計画的な接触ならどうだろう。真樹と奏の関係を疑った貴志に、奏は20年前の真実が語られたボイスレコーダーを託し、彼も音声を聞いているはずで、浩一郎への復讐を企てていたり、貴志が20年前の人間ドックの記録の改竄に関与していたら、証拠隠滅に動くはず。その貴志の犯行を真樹が目撃していたら、奏の未来を思い黙秘するだろう。ただ、貴志が恋敵の真樹を放火犯に仕立て上げたという線もありえる。渡辺刑事(板尾創路)もどうも貴志をマークしているようだ。

20年前の事件の真相に関しては、政治的な圧力に検察が屈したと考えられる。ただそれが、単に英介に全ての責任をなすりつけたものか、それとも初めから英介を陥れるための計画だったのかはわからない。もし後者なら、正義感の強い検事だったがために、政治家たちにとって目障りな存在で、検察もグルになってハメられたのではないか。それが真実なら大スキャンダルだ。

ただ一番の謎は、浩一郎が同僚の英介をなぜあそこまで追い込んだのか。その前に弁護士に職業を変えた理由は何か。エリート一家の浩一郎が、ライバルの英介が東京地検で活躍していることに逆恨みしたのか、それとも検察時代に英介のように上司たちから責任をなすりつけられ、家族の命が危険にさられるほどの出来事があり、検察に復讐するために弁護士となったのか。たまたま相手が英介で、自殺は想定外だったのかもしれない。弁護士としての名声を高めるために財界人たちと悪魔の契約を結んだ可能性や、奏&真樹&貴志のような三角関係が当時あって英介を恨んでいた可能性など、色々と考えられる。

議員秘書は、実は20年前の事件の真相を追っている側の人間で、検察内部の悪を追求するために浩一郎と手を組んでいる逆転の展開となったら面白いが、そこまで気を衒った展開にはならず、淡々と真実が明かされていくのではないだろうか。それよりも奏の三角関係がどんな結末を迎えるのか。貴志が普通にいい人で終わってほしいが、果たして。
(文=本 手)

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