山内マリコ、2年ぶりの新作長編『マリリン・トールド・ミー』が5月28日に発売。シスターフッドを描いてきた作家による、時代の閉塞感を突き破る"運命突破系"青春小説

山内マリコの最新長編小説『マリリン・トールド・ミー』が5月28日に株式会社 河出書房新社より発売された。 『マリリン・トールド・ミー』は、コロナ禍で家から出られない一人暮らしの大学生・杏奈と、彼女の心を救い運命を変える伝説のハリウッドスター、マリリン・モンローをめぐる長編小説。 2020年に多くの学生が体験したステイ・ホームの孤独、不安、青春が通り過ぎていく寂しさ。本書で描かれる、大学の前半2年間をほぼ一人ですごす主人公の日常は、コロナ禍という緊急事態で多くの方が感じたであろう感情を今あらためて思い起こさせる。

3年生になってようやくキャンパスに通いはじめた主人公は、マリリンの影響も受けてジェンダー社会学のゼミに加入する。「アンチフェミ女子」「意識低い男子」「50代の同級生」などクセの強いメンバーたちと、戸惑いながらも刺激的な大学生活を過ごす日々。指導教官・松島の導きも受けて、杏奈が卒業論文のテーマに選んだのは、コロナ禍で心の支えになってくれた“マリリン・モンロー”だった。 当時の資料を読み漁るうちに浮き彫りになったのは、マリリンが受けた性的虐待、映画界の女性蔑視、働く女性の苦悩、今の時代も根深く残る社会の問題。主人公が現代で学ぶジェンダー社会学の視点から考えるそれらのテーマは、マリリンが生きた時代から60年が経過している事実、その歴史の記録とともに読者の心を強く揺さぶることだろう。 卒業論文「セックス・シンボルからフェミニスト・アイコンへ マリリン・モンローの闘い」を書き上げた先に、主人公はどんな運命を選択するのか──? すべての人に元気と勇気をもたらす “運命突破系” 青春小説であり、シスターフッドを描いてきた山内マリコの新たな代表作となりそうな一冊だ。

書店の皆さんからも賞賛の声が続々

時代が違うから共感できないなんてことはない。境遇が違うから区別できることなんてない。それぞれの生きる瞬間がぴたりと合わさる時、小さな歯車かもしれないがより良い世界へ動き出すことはきっとある。この小説を通じてぜひその力を感じて欲しい。(大盛堂書店 山本亮さん) 過去を生きた彼女と、今を生きる自分が時間を超えてすっと近づき、手を取りあう。明日へ向かう勇気がお腹の底から湧いてくる一冊。(紀伊國屋書店 鶴見大学ブックセンター 伊勢川詩織さん) 檻を飛び出すことを夢見たマリリンと、檻を飛び出そうともがく杏奈の共演は、私たちにまだ見ぬ望みを与えてくれる。(BOOK COMPASS ニュウマン新宿店 成生隆倫さん) 絶望と希望がごちゃまぜになりながら、一気に読んだ。この物語に終わりはない。先が見えないながらもがいて生きていく。そうした先に、つかみとれる何かがあればいい。 そして私たちは必ずつかみとるのだ。(八重洲ブックセンター 宇都宮パセオ店 高野典子さん) 「Don't worry, you'll be fine.」は主人公だけでなく、全ての若者に向けた山内さんの愛のメッセージだ。(ジュンク堂書店 奈良店 伊藤奈美さん)

【山内マリコ プロフィール】

1980年富山県生まれ。2008年に「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞。12年、受賞作を含む短編集『ここは退屈迎えに来て』を刊行してデビュー。その他の著書に『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ 小説ユーミン』など。

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