黒部峡谷鉄道、トロッコ電車の24年全線開通断念 富山県はキャニオンルート年内一般開放を見送り

地震による落石で橋桁や枕木が損傷した鐘釣橋=黒部峡谷・鐘釣(黒部峡谷鉄道提供)

鐘釣橋周辺の復旧に遅れ

 黒部峡谷鉄道(黒部市黒部峡谷口、鈴木俊茂社長)は27日、トロッコ電車の今年の全線開通を断念すると明らかにした。年間を通して全線開通できないのは1971(昭和46)年の創業以来初めて。能登半島地震で沿線の鐘釣(かねつり)橋と周辺が損傷し、10月の開通を目指していたが、想定以上に工事に時間を要することが分かった。これに伴い県は同日、同鉄道の欅平(けやきだいら)駅を起点とする黒部宇奈月キャニオンルートの年内の一般開放を見送ると発表した。

 鐘釣橋は終点・欅平駅の一つ手前の鐘釣駅近くにある。黒部峡谷鉄道によると地震直後の調査で、近くで落石があり、橋桁の鉄骨が曲がったほか枕木の一部が抜け落ちたことが分かった。近くの岩場で亀裂も確認され、同社は3月、全線開通を10月に遅らせると発表した。4月中旬に改めて調べたところ、岩場の岩盤が50センチほどずれており、工期が延びることになった。

 キャニオンルートは、欅平駅と黒部ダムを結ぶ約18キロの物資輸送路。上部専用鉄道やケーブルカーなどを乗り継いで電源開発の歩みや雄大な自然景観に触れることができ、北陸新幹線敦賀延伸後の観光誘客の起爆剤として期待されていた。当初は6月に開放する予定だったが、地震によって2度目の延期となった。県は来年以降の一般開放と旅行商品の販売開始時期について、黒部峡谷鉄道の全線開通時期が示されてから決めるとした。

 同社と関西電力は、一連の工事は年内に終わらず、来年の雪解け後も続くと説明。全線開通時期の見通しは立たないとした。

 黒部市芸術創造センター・セレネで開いた説明会で、同社の青島郁男取締役総務部長は「多くの皆さまにご不便をおかけし、誠に申し訳ない。安全安心な運行の確保ができるよう全力を挙げて取り組んで参りたい」と述べた。

新田知事「一日も早い復旧を」

 新田八朗知事は27日、報道陣の取材に応じ、黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放の二度にわたる延期に「期待していただいた皆さんには大変申し訳ない」と述べた。黒部峡谷鉄道と関西電力からは21日に連絡を受けたとし「安全を最優先に、一日も早い復旧に期待したい」と述べた。

落石で橋桁や枕木が損傷した鐘釣橋=黒部峡谷・鐘釣(黒部峡谷鉄道提供)

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